第44回


*使用したお題*
目は素知らぬ風味
恋人以上、友達未満
『なんでもない』

*小話エドガー従者設定

飛空艇の整備の為にと近くに降り立った土地には街として機能をしている場所があった。
ケフカによって引き起こされた大災害の影響で街として機能をしている場所は以前と比べればかなり少なくなってしまった。
今回立ち寄った街は大災害の影響は受けているものの他の土地と比べれば遥かに街として機能をしている場所であった。
飛空艇の整備が終わるまで思い思いに過ごす事になり、私は何となくその街へと足を踏み入れた。
行商人が行き通い、賑わいを見せる街。
以前はもっと他の場所でも見られたのになと思いながら辺りを見回しているととある一点に視線が止まる。
そこには我が主ことエドガー様のお姿。
あぁやはりこちらにいたのか、と思いつつ見れば街の女性と思わしき方にお声をかけていた。
エドガー様は女性が大好きだ。それはお仕え始めた時から今でも変わらない。こんな状況下でも。
でもそこがエドガー様らしいなと思うのだ。
思わずくすりと笑い、エドガー様から視線を外し、歩き出す。その直後。
「ぎゃっ」
何かにぶつかった。
小さな衝撃に体が後退をする。
ぶつかった衝撃で鼻が痛い。思わず手で抑えながら前を見る。この場所でぶつかるといったら人しかいない。
「ず、ずいませ……ってあれ」
謝りかけ、ぶつかった人物に思わず首を傾げた。
そこには飛空艇の整備をしているはずのセッツァーの姿。相変わらずちょっぴりだけ怖い顔である。
「セッツァーじゃないですか!なんでこんなところにいるんですか?」
「足りねぇもんがあったんだよ。そんで探してたらてめぇがぼさっと突っ立っていた」
「そうだったんですね!それは失礼しましたっ!」
謝り、すすっと彼の為に道を開ける。だがセッツァーは動かずある一点を見ていた。
「あいつも凝りねぇな」
その視線の先は先程私も見ていたエドガー様だ。見れば今度は違う女性の方とお話になっている。
「エドガー様の事ですか?ふふっ、エドガー様が今日も楽しそうで私も楽しくなっちゃいますよ!」
思わず笑顔になってそう言えばセッツァーは何故か目を細めた。
そのちょっぴりだけ怖い顔でそれは正直更に怖くなるだけだと思うのだが今の彼の雰囲気的に言っては駄目な気がする。うまく言い表せないけれど直感だ。
「お前それ本気で言ってんのか?」
「……?はい、そうですけど」
呆れた様に言うセッツァーに首を傾げる。
エドガー様が楽しそうにしているお姿を見れば私も楽しくなる。それは紛れもない真実だ。
「はぁ…お前、本当に馬鹿だな」
「んなっ!?きゅ、急になんですか!」
「見過ぎて感覚がおかしくなってんのか?それともただ単に主馬鹿なのか?どっちだ…ってどっちもか」
何やら1人でぶつぶつと言うセッツァーに訳が分からない。
もしかして飛空艇の整備に疲れて頭がおかしくなってしまっているのかもしれない。そういえば疲れている時は甘い物が一番だと聞いた事がある。
「セッツァー、もしかして疲れているんですか?」
「は?」
「だったら私、さっき甘くておいしそうな匂いがするカフェを見つけたんです!一緒に行きましょう!」
ここに来る途中、通ってきたところを思い出す。確かここからちょっと戻ってのところだったはず。
日頃飛空艇共々セッツァーにはお世話になっているしここでお礼もしたい!何故か困惑の色を浮かべているセッツァーの手をそっと取る。その直後。
ぐいっと後ろに体が傾いた。と同時に反射的にセッツァーの手を離す。
「ぎゃ!?」
驚いたのも束の間、背中にとんっと軽い衝撃。そして自身の体の前に誰かの両腕が回ってくるのと同時にふんわりと鼻孔に心地良い香りが広がる。
この香りも、腕も私は知っている。
「あれ、エドガー様…?」
顔を上げればそこには予想をした通りエドガー様がいた。セッツァーと話していたのは時間からしたらものの数分だというのに、いつの間に。そしてエドガー様が来た事にまったく気づかなかった。
「やぁ二人とも。こんな道端で何の話をしていたんだ?」
「お前には関係ねぇんじゃないか?」
エドガー様の問いにセッツァーはぶっきらぼうに答える…というかその答え方はいくらなんでも失礼だ!
セッツァーに対して何か言わねばと口を開こうとしたがそれより先にエドガー様が言葉を紡ぐ。
「確か一緒にカフェにとかって聞こえたんだが」
いつも通りの穏やかな声音と言葉遣いでエドガー様が言えばセッツァーは舌打ちをした。そして小声で「全部聞いてんじゃねぇか、地獄耳が」と呟く。
そんな悪態をつくセッツァーに対してエドガー様は怒る事もなく「何か言ったか?」と普段と変わらない様子で言う。すぐ感情を剥きだしにしてしまう私とは大違いだ。やっぱりエドガー様はすごい。
「何でもねぇよ。ったく、その馬鹿、ちゃんと見てろよ」
また馬鹿と言った。この街で会ってから何回言ったんだこの人は!
思わずいらっとしたので何か言おうとする。が、それより先にセッツァーはくるりと私とエドガー様から背き、歩き出してしまった。その姿はすぐに人混みに紛れてしまう。
…あっ、そういえばカフェのお話はどうなってしまったのだろうか。まぁいいや、また誘おう。なんだか今日のセッツァーはあんまり機嫌が良くなかったみたいだし。普段はあんなに馬鹿馬鹿言わないから。
「さてと。じゃあ行こうか」
セッツァーを共に見送ったエドガー様が言葉と共に私の方を見てにこりと微笑む。
……ん?行こうか?
「あの、どちらにですか?あっもしかして機械の部品でも調達に…?」
「それも行いたいが今は後回しだな。まずはカフェにだよ」
「えっ!?もしかして、セッツァーに言ったカフェですか…?」
「あぁそうだよ。セッツァーは行ってしまったからね。2人で楽しもうか」
ゆっくりと私から離れたかと思えばエドガー様はそっと壊れ物を扱うかの様に私の手を取る。
…そういえば、先程お話をされていた女性はどうしたのだろうか。
「あの、エドガー様。先程お話をされていた女性の方は…?」
「うん?あぁ、彼女の事なら気にする事はないよ」
疑問を投げかけるとにこりと微笑みながらエドガー様はそう言った。エドガー様がそうおっしゃるのなら特に気にする事はないのだろう。
「さぁ、君のおすすめのカフェとやらに行こう。案内は頼んだよ」
「は、はいっ!ええっと、こちらになります!」
なんだか考えていた事と違う事が起きている気がするがこうして街中でもエドガー様とご一緒出来るなんて光栄だ。
繋がれている手の温もりの心地良さにふわふわと気分が浮かぶのを感じながら私はエドガー様をカフェへとご案内をするのであった。











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