少女と体調


*セシルとローザの娘設定。

「カインさん、すっごく疲れてませんか…?」
カインがバロン城に帰ってくるやシオンから言われた言葉がそれだった。
じぃっとこちらを見てくる瞳にカインは素直に頷こうか迷う。
赤き翼は先程任務から戻ってきたばかりだった。
内容をセシルに報告をし終えたカインはその後偶然シオンに会い、冒頭に至る。
「カインさーん?」
「……あぁすまない」
「やっぱりすっごく疲れていません?今回の任務、長かったですもんね」
「…そうだな」
「んーさすがに白魔法じゃ精神的な疲れまではとれないですし…ここはやっぱり素直にお部屋で休むしかなさそうですよねえ…」
考える素振りをしつつシオンは変わらずカインを見つめている。
そんなに顔に出ているのだろうか、と思いつつカインは苦笑いを浮かべつつ話題を変える。
「シオンはこんなところで何をしているんだ?」
「えっとですね、先程ミシディアから帰ってきたばかりなんです!」
「なるほど。相変わらず魔法の修行か」
「はいっ!セオドアと違って剣の扱いはからっきしですからね、私。でもその代わりに魔法は得意ですけどっ!」
笑顔でそう言うシオン。そんな彼女の頭にカインはぽん、と手を置く。
「あまり無理はするなよ」
「なっ…!わ、わかってます!ま、またそうやって子供扱いするんですから…!」
「その反応が子供だな」
「……ぐう」
笑顔から一転、どこか拗ねた様な表情を浮かべるシオンにカインは小さく笑う。
「そ、それより!ほらカインさんは部屋に戻らないと!」
「あぁ…そうだったな」
「私もご一緒しますから、ほら行きましょ!」
「俺一人で大丈夫だが」
「駄目です!カインさん絶対部屋に戻らないでしょう?ほらほらっ」
言いながらカインの手を引っ張るシオン。
「カインさんはもうちょっと体調管理をしっかりしないと」
「これでもしているつもりなんだがな」
「私から見たら全然出来てませんっ!」
ぐいぐいとカインの手を引っ張りつつ歩き出すシオンとシオンに手を引かれるままに送れて歩き出すカイン。
「そういうところはローザにそっくりだな」
「ふふんっ、親子ですもの」
やや呆れながら言ったカインの言葉に得意気に答えるシオン。
すれ違う兵士達が二人を不思議な物を見るかのような目つきで見ているが二人は全く気にはしていないようだ。
最初こそシオンに引かれる形だったカインだが歩幅の違いがありすぎる。
いつの間にかシオンの隣に並ぶ形になっていた。何故か手は引かれていた時と同じ状態で。
「だいたいカインさんが倒れたらうちの一家全員が大変な事になっちゃうんですからねーもうちょっと気を付けてくださいよー」
「わかったわかった」
「今五月蠅いって思いましたねー?顔に出てましたよー?」
「気のせいだ。ほら目的地に着いたぞ」
自分より下から感じる疑いの視線をさらりと受け流し、カインが目の前を見る。
そこはカインの部屋の前だった。
「ようやく到着ですね!」
ぱっとカインから手を離し、シオンがにこにこと笑いながらカインを見上げる。
「じゃあちゃんと休んでくださいね!」
「あぁ」
頷くカインに満足そうにし、シオンが来た道を戻りだす。
その背中を見送りつつ、カインは自室のドアノブに手を伸ばす。
その手にはまだ少女の温かい手の温もりが残っていたのであった。









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