星の数だけの想い


その横顔はよく知っているような気がした。




ぱちぱち、と火が踊る。

それをじっと見ながら、ふとシオンは隣で背中を丸めて寝ている弟のセオドアの方を見た。

まだあどけない表情でぐっすりと眠っている2つ下の弟に思わず頬が緩んだ。

そっとふわふわの銀色の髪の毛に触れていると名前を呼ばれた。

「シオン」

なんですか、と少女は視線をセオドアから移して自分たちを導いていてくれる男を見た。

名前も素性も知らない男。最初、セオドアから聞いたときにはそんな人と旅をしているのか、と驚いて警戒をしていたが何時からか、そんな思いは消えていた。

「もう夜も遅い。見張りは私がするから、寝なさい」

「大丈夫です。今まで1人旅をずっとしてきましたから」

自分でそう言い、旅に出る当日を思い出した。
そういえば父と母に大反対されたっけなぁ。
けれどもっと広い世界を自分で見たかったから。だから無理やり説得して、最後は向こうが折れてくれた。

「1人で、か。お前の両親はよく許可したな」

「えぇ。でも大変でした。女1人で旅だなんてって言われて」

シオンが懐かしむように言うと、男はふっ、と笑った。

「だろうな。だが、なぜ旅に?」

「もっと世界を見てみたかったんです。本だけでは分からないこともたくさんあるから」

ふわりとシオンは微笑んだ。

その表情を見た男は一瞬驚いた表情をした。

それに気づいたシオンが「どうしましたか?」と声をかける。

「いや……なんでもない。」

小さく頭を横に振り、似ているとかすかな声で呟く。

だがその言葉はシオンには聞こえなかった。

「貴方はなぜバロンに?」

「それは…」

「言わないっていうのは駄目ですよ。さっき、私は貴方が聞いてきた質問に答えました。今度は貴方が答える番です」

笑顔で聞いてくるシオンに男は思わず息をついた。

――やはり…似ているな…

「ある竜騎士を追っている」

「竜騎士、ですか…」

バロンと竜騎士。

2つの単語を思い浮かべ、シオンは写真で見たことがある両親の幼馴染を思い出した。
写真の中の彼は兜で顔を隠していた。けれどなんだか寂しそうな、そんな感じの表情をしているような気がしたとシオンはあの時感じた。

――その人なのかな…

「そうですか。……それじゃあ、私たちと同じスピードだと――」

「奴は必ずバロンにいる。…それにお前たちを放ってはおけなくてな」

そう言い、シオンの隣で寝息をたてて寝ているセオドアを穏やかな表情で見つめ、そしてシオンを見た。
視線が男と合い、慌ててシオンは声を上げた。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!お前たちってことは私も入っているってことですか?」

「当然だ。」

「…うーん…複雑な心境…」

「私から見ればお前もまだ子供だ」

「ま、まぁそうですけど…これは喜んでいいところなのかな…?」

うーん、と悩むシオンに男はまたふっ、と笑う。

そして視線を数多の星が輝き、2つになった月がいる空へと移したのであった。










(この少女はどうしてこんなにも彼女に似ているのだろう)(うーん…早く母上みたいな大人にならないとなぁ…)









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