きみの手をとって彼方へ


この箱の中から、



時は夕暮れ。昼間よりも冷たい風が頬を掠め、シオンは思わず身震いをした。

それに気づいたミンウは「大丈夫か」と声をかけた。

「やはりやめておいた方がよかったのかもしれないな」

小さく呟かれた言葉にシオンはゆっくりと頭を振った。

「誘ってくれたのはミンウでしょ」

「あぁ…だが」

「見たいの。外から夜空を」

昔から体が強くなかったシオンは夜に出かけることが出来なかった。
そんな彼女にミンウが共に夜空を見に行こうと誘ったのが始まりだった。

「で、おすすめの場所はまだ?」

「もうすぐだ」

空へと視線を送りながらミンウは答える。
昼間は晴天。今は雲一つない夕暮れ。夜にもなれば星たちが輝くだろう。
天候に問題はない。
問題はシオンの体だ。強がってはいるが家を出てきた時よりも顔色が悪くなってきている。
このまま進んでも良いのだろうか。

「…また変なことを考えているでしょ」

じと、とシオンがミンウを見ながら言った。
空から視線を戻し、シオンを見ると彼女は笑っていた。

「大丈夫、大丈夫!いざとなったらミンウの白魔法があるって」

「…魔法はそこまで万能ではないぞ」

「もう…そうやってすぐに良くない方のことばかり考えるんだから」

「君みたいにプラス思考ばかり考えられないのでね」

「それって誉めてるの?」

「ご想像にお任せするよ」

ミンウが小さく笑うとシオンは膨れた表情をした。
そんな彼女の頭を優しく撫でながらミンウは撫でていない方の手で先を示した。

「ほら。着いたよ」

シオンが示した方向を見る。
すると膨れた表情から一転、笑顔になってミンウを急かし始めた。

「やっと着いたのね!早く行こう!」

頭に被さっている手に自分の手を重ねるとミンウを見ながらにっ、と微笑む。
その笑顔につられるようにミンウも微笑みを返した。










(おお〜星が綺麗だよ、ミンウ!)(そうだね)(これからこっそり見に来ようかな…)(ははっ、君は冗談が好きなんだね)(…目が笑ってない)


title 虚言症さま









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