方向音痴な地図


地図の正しい見方とは。



「ふむ…」

目の前で先ほどから唸りっぱなしのカイン。
その手には世界地図が広がっていた。

その様子を部屋に入ってきたシオンは見ると、やれやれと息をついた。

「カイン」

そう呼ぶとようやくカインはシオンの存在に気がついたようだ。

「あぁ、シオンか。どうした?」

「どうした、じゃないよ…」

いつも通りのカインにシオンは片手で頭を押さえた。
言うべきか、言わないべきか。
しかし、言わなければ一生カインは地図とにらめっこをしているだろう。
ここは言わなければ。

「あのさ、カイン」

「なんだ?」

「地図…逆さまだよ」

――沈黙。
ほんの数秒だったが、部屋の中に風が吹いた気がした。

「な、なんだと…?」

「いや、そんなに驚かれても困るんだけど」

「ファブールが見つからなかった訳だ…」

カインはぽつりと洩らすと地図をひっくり返した。

「アンタさぁ…セシルたちと一緒に旅をしていた時に寄ったんじゃないの」

「そんな昔のことは覚えていない」

「開き直るなっ!」

ふとセオドアと2人旅をしていた時はどうしていたのかと思ったが、カインには聞くのをやめる。
後でセオドアに聞こう。

「しっかし赤き翼の隊長が方向音痴とは…」

「う、うるさい!仕方がないだろう…」

「まぁ、だから副隊長の私が活躍出来るんだけど」

「フッ…俺はお前に活躍の場を与えてやっているんだ。感謝するんだな」

「うざっ!?てかさ、いい加減に直しなさいよね!毎回毎回地図を見るとすぐに私のところに寄ってくるのやめなさいよ!」

「仕方がないだろう。地図を見たってどこにあるのか分からんのだ」

「だーかーら!直しなさいって言っているじゃない!」

「フッ、無理だな!」

――コイツ、完璧に開き直っていやがる。
シオンは重い息と共に心の中で呟いた。
そんなシオンにカインは地図を畳んで歩み寄る。

「シオン」

「…なによ」

「俺が方向音痴を直さない理由は分かるか?」

「めんどくさいんでしょ?」

シオンが即答するとカインは苦笑しながら「違う」と返した。

「俺が方向音痴だったらずっとシオンは傍にいてくれるだろう?」









(バッ、バカじゃないのっ)(顔、真っ赤だぞ)









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