君は、光


太陽のような笑顔。




外を見れば漆黒の闇の中に白いものがちかちかと輝いている。この白いものは他の惑星なのだろう。
あまりにも現実味にかける話だ。まさか、月に行くことになろうとは。
成り行きで2人に出会い、旅についてきたシオン。バロン城での騒動の後、月に行くことになったのだ――ミシディアに伝わる「魔導船」で。

ぼぅっと物思いにふけていると不意にぽん、と肩を叩かれた。
シオンはゆっくりと振り返ると後ろに立っていた人物の名を呼んだ。

「あれっ、カインさんじゃん」

そこにはセオドアと共に旅をしてきたカインが立っていた。その表情はどこか苦悩に満ちていた。

「その様子だとセシル陛下のご容態はよろしくないのね」

「あぁ。目は開けたんだがな…」

「――まっ、あの少女を倒せば何とかなるって」

ぐっ、と親指を上にたててシオンはにっこりと笑って言った。
明るく振る舞うシオンにカインは少しだけ微笑んだ。

「お前はいつも明るく振る舞うな」

「それが特技だもん。何事もプラス思考でいかないと気分が参っちゃうし」

あははっ、とシオンの笑い声が部屋に響く。
この船に乗っているメンバーはかつて世界を救った救世主たちがほとんどだ。そして、皆がセシルの身を案じてどこか陰りのある表情をしている。
シオンは皆のようにセシルとは親しくない。精々遠くから眺めたことがあるくらいだ。確かにセシルのことは心配だ。多少は。それでもシオンはいつも通りに振る舞う。少しでも船の中を明るくさせるために。

「後悔はしてないか?」

カインの問いにシオンは目をぱちぱちと瞬かせた。
質問の意味を分かっていないと悟ったカインは言葉を続けた。

「この船に乗ったことだ。お前は成り行きで俺とセオドアの旅に同行し、そしてこの船に乗った。だから――」

「後悔?するわけないよ。これは私の意思。カインさんとセオドアの旅に同行したのも私の意思。それに、さ…こーんなに面白そうなことを前にずらかるだなんてつまらないじゃない」

自分達の惑星から離れていつも見えている月に行くことが出来る。これほど面白そうなことはない。

シオンの言葉にカインは苦笑しながら「そうか」と返し、外に広がる風景を見た。

「安心しろ。お前は俺が守ってやる」

「…あっ。今、口説かれたの、私?やっだーどうしよ、いだっ!」

言っている最中に頭を軽く叩かれ、シオンはカインを睨み付けた。

「カインさん、暴力はいけないんだよ」

「…むっ、すまんな。手が勝手に動いてな」

何もなかったかのような表情であっさりと言ったカインにシオンは「うっそだぁ!」と抗議の声を上げたが、不意に表情を優しくさせた。
それに気づいたカインは視線をシオンに向けた。

「さっき言ったこと、アテにしてるからね?」

どこか挑戦的に言うシオンにカインは、ふっ、と微笑んで言った。

「あぁ。――任せておけ」








(その笑顔を守るために)









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