ある日の風景


一緒に過ごす時間は任務よりも大切だ。




――両手には紙袋。
中には食材がところ狭しに詰められていた。
シオンはふぅ、と息をつき、部屋をぐるりと見渡した。この部屋の主は長期任務が多いため滅多に部屋には帰ってこない。
そのため無駄に広い部屋もシオンのほぼ独占状態だった。

城下町で買ってきた食材の袋をリビングのテーブルの上に置き、ソファに座り込む。

しばらくそのまま物思いにふけていると隣の寝室からどさっ、と何かが落ちた音がした。

その音にはっ、と意識を戻して寝室のドアを見た。

「…落ちた?」

ぽつりと呟くとぎぃ、とドアが開かれた。

不機嫌オーラまるだしのカインが頭を掻きながら立っていた。
金色の髪が掻かれるたびに絡まっていく。

「おはよう、カイン」

シオンが言うとカインは相変わらず不機嫌な表情で「あぁ」と短く返事をした。そして壁に掛けられている時計を見た。
時刻は3時を過ぎた辺り。それを見たカインの表情が豹変した。

やっぱり、とシオンは紙袋が置かれているテーブルを凝視しているカインを見て苦笑した。

今日は2人で出かける予定だった。
だが、昨日の夜遅くに帰ってきたカインを朝早くから買い物に付き合わせるのも酷な気がしたシオンは1人で買い物を済ませてきたのだった。

「シオン…すまん」

申し訳なさそうに謝るカインにシオンは微笑む。

「いいって。カイン、疲れていたんでしょ?」

「だが、一緒に買い物に行こうと言ったのは俺だ。約束を破ってしまった事実に変わりはない…」

「…もう。本当に真面目なんだから」

ソファから立ち上がり、シオンはカインの前に立った。ぱちっ、と気まずそうな表情をしているカインと視線が合うとシオンはにっこりと微笑んだ。

「また今度一緒に行こう?今日ね、いいお店を見つけたんだ」

背伸びをしてカインの髪をそっと指に絡める。
あぁ、と返事をしてカインがやっと微笑んだ。

「約束をしよう。今度は絶対に行こう」

「えぇ。…あ、お腹空いてるでしょ?何か簡単な物でも作ろっか?」

「いや、いい。それよりも買ってきた物を片付けなくていいのか?」

カインがテーブルを見る。あっ、と声を上げてシオンが慌てて買い物に駆け寄っていく。

「すっかり忘れてたよ」

よっ、と紙袋を持ち上げてシオンは照れ笑いをした。

「手伝おう」とカインがシオンの持っている紙袋に手を伸ばす。

「いいの?」

「1人より2人でやった方が早いだろう」

紙袋を受け取ったカインはそう言いうとふっ、と笑った。

そうだね、とシオンはにっこりと微笑んだ。









(あ、それはそっちじゃないよ!って、冷蔵庫に入れる物じゃないよ、それ!)(そ、そうなのか…?)(もう〜!カインは座っていてよ!)(……)









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