言葉の魔法


どっちも変わっていないなぁ。




迫ってきたゼリー状の魔物を業火の魔法で焼き払う。

「あ〜…まだいるのぉ」

持っている杖をくるん、と手の中で一回転させてシオンはやれやれと空いている手で顔を覆った。

月に来てからというもの戦い続きで疲労が徐々に溜まってきていた。
ましてや魔法は神経を使う。

だが、それは自分だけではないということは分かっている。
少し遠くでは剣が閃き、魔法が炸裂していた。

負けられない、とシオンは心の中で自身に渇を入れ、詠唱に入った時。

後ろで魔物の断末魔が聞こえた。だが、それを聞きつつもシオンは詠唱をやめず、魔法を発動させる。

「――クエイク!」

地響きが轟き、迫ってきていた魔物を一掃する。
そして、次は傷を癒すための呪文の言葉を紡ぐ。

「ケアルガ」

淡い光がシオンと後ろに立っている仲間を包んだ。

「すまんな、シオン」

「いえいえ。どういたしまして」

シオンが後ろを振り返って微笑む。

「こっちこそ助かったよ、カイン」

聖なる光を身にまとった幼馴染みは昔と変わらずにふっ、と笑った。

が、すぐに表情を険しくさせた。

「シオン…顔色が良くないな。少し休んだらどうだ」

「あらあら。まだまだ若い子たちには負けないよ?」

互いをサポートしながら戦っているパロム達を見てシオンは表情を和らげた。
――私が戦う理由。それはこの子たちの希望を消さないため。
だからそのためだったらこの命さえもなくしても構わない。
それぐらいの覚悟でシオンはこの戦いに臨んでいた。

それに気付いたカインは「変わらないな」と肩をすくめた。

「昔からお前はいつも自分よりも周りを気にかけていたな」

迫ってきた魔物を槍で薙ぎ払いながらカインは言った。

そうだっけ、とシオンは言いつつ詠唱を開始。

「そうだったさ」

カインがシオンに牙を向いた魔物を槍で突く。

「いつも俺たちを励ましてくれていた」

「そうかな?ブリザガ!」

魔法を唱え、シオンは辺りを見渡す。
そして再び詠唱に入る。

「止まれ、ホールド!」

動きが止まった魔物たちにカインが高く飛躍。
そして魔物の軍勢の中心へと着地をしたかと思うと次の瞬間には、次々と槍を奮って魔物たちを倒していく。

「――シオン!」

カインが叫ぶ。
オッケー!とシオンが詠唱を開始する。
それを見てカインは再び高く飛び上がった。

シオンが次々と補助魔法をカインへとかけていく。
そして再びカインは敵の中へと突っ込んでいった。

それを見ながらシオンは呟いた。

「アンタも変わってないよね、カイン」

いつもさりげなく私たちのことをサポートしてくれていたよね。落ち込んでいたらぶっきらぼうに励ましたりしてくれたっけ。
今も私を励ますために来てくれたんでしょ。分かっているんだから。

ふふっ、とシオンは小さく笑い、杖を構える。
早く終わらせよう。この戦いを。そして皆で一緒に帰ろう。










(相変わらず危なっかしい奴だな)(世話焼きお兄さんは相変わらずか)









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