しあわせの旅路


多忙な日々に休息を。



窓の向こうでは小さな白い塊がほわほわと宙を舞っている。
それをぼーっと眺めていると「カイン」と名前を呼ばれた。

「ご飯、食べないの?」

重箱を持ったシオンがこちらを見て首をかしげていた。

「いや、食べる」

ソファからゆっくりと立ち上がり、椅子に座る。
テーブルの上に重箱を置いたシオンも椅子に座ると「頂きます」と手を合わせた。

「これはシオンが全部作ったのか」

箸で伊達巻を摘まみながらカインは聞くとシオンはこくりと頷いた。

「そうだよ」

「凄いな。本当に料理が好きなのだな、お前は」

「料理…というか、お正月だからね。ちょっとだけ豪華にしてみたくなっただけだよ」

照れたようにはにかむシオンをカインは見ながら伊達巻を口に含む。
ほのかに甘い味が口の中に広がる。

そういえば、とシオンはカインに話しかけた。

「いつからお仕事は再開?」

その質問にカインは少しだけ表情を固くした。
言い淀むカインにシオンは「どうしたの」と心配そうに聞く。

「あ、いや…実は明日からなんだ」

言いにくそうにカインは言うとシオンの顔色を窺う。
シオンは最初は目をぱちぱちと瞬かせていたが、カインの言葉に「そっか」と少しだけ悲しそうに微笑んだ。

「でも仕方がないよね」

ぽつりと呟き、そこで会話は途切れた。
黙々とおせちを口に運ぶシオンのを見ながらカインは内心で慌てる。

なんとかシオンを笑顔にさせなければ。
クリスマスも大晦日も1人にさせてしまったこともあり、余計にそう思い込む。
口では大丈夫と言うが1人で過ごすのは寂しいに決まっている。

「シオン」

若干声のトーンが上がっているのに気づきつつ、カインは平然を装いながら話しかける。

不思議そうにこちらを見つめてくる目を逸らさずにカインは頭の中で考えた言葉を口にした。

「そ、そのだな…今日は1日休みだから、な。ど、どこかに行かないか…?」

どもりながら言うと曇っていたシオンの表情がみるみる晴れていくのがよく分かった。

「本当!?」

「あ、あぁ」

「行こう、行こう!…ふふっ、カインと一緒にお出かけなんて久しぶりだね」

「…あぁ、そうだな」

本当は1日中寝ていたいところだがシオンと出掛けたいというのも本心。
早速行く場所を考え始めたシオンを見ながらカインはフッ、と笑った。

「ねっ、どこに行く?」

「そうだな…滅多に行かないところがいいよな」

「うーん。でも、あんまり遠出は出来ないんだよね」

頭の中で世界地図を描いているであろうシオンにカインは思わず微笑むのであった。










(難しいよね…)(船の航路を考えるとミシディア、ファブール、ダムシアンか)(あ、ダムシアンでいい食材売ってるかも)(ではダムシアンにするか)









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