最後は結局こうなるのか


真月を止め、青き星へと戻った一行はそれぞれの道を歩み出した。
戦いの爪痕は大きく、すべてが元通りになるのには時間がかかるだろう。
それでもどれだけ時間がかかっても出来る限りの事は協力をしたいとシオンは思い、バロンへと戻った。
あまり好きではない書類の整理と将来を担う魔道士たちの育成をする日々。
戦っていた時と比べたら平和な時を過ごす日々。けれどもどこか物足りなさを感じていた。
この気持ちは何だろう、と走らせていたペンを止め、何気なく窓を見る。
窓の外には透き通るくらいに美しい青空が広がっていた。そして聴こえてくるのは鍛錬をしているであろう赤き翼の隊員たちの声。
その声を聞き、はっと閃いた表情をした。
「…最近話してない」
ぽつりと呟かれた短い言葉。
仕事に追われていてそういえば久しく竜騎士の幼馴染の顔を見ていない気がする。
「そうか…物足りない原因は…!」
そう呟くや勢いよく立ち上がる。その拍子に山積みになっていた書類の山からひらひらと数枚紙が床へと落ちるが気にも留めず、シオンは慌ただしく部屋を後にした。

鍛錬の終わりを告げ、明日以降の予定を必要な部分だけ告げ解散を告げる。
隊員達がそれぞれ疲れたような表情を浮かべながら鍛錬場を後にするのを見ていたカインはふと自身より遥かに高い位置から視線を感じた。
視線がする方へと目を移すとそこには黒魔道士の幼馴染がいた。
「カイン見つけた!」
その姿と声を久しぶりに感じた気がする。
そういえば同じ場所にいるというのに1週間以上は会っていなかった気がする。
真月での戦いの時では嫌と言うほど顔を合わせていたものだ。そしてそのたびに言い争って。その事を思い出し、何故か酷く懐かしい気持ちに襲われた。
などとカインが考えているうちにシオンはその場から飛び降りていた。
一瞬だけカインの背中に嫌なものが走るが良く見ればシオンは落下している状態から魔法を唱えていた。
そして何事もなくカインの目の前にすっと着地をする。
「なんかすごい久しぶりに見た」
じぃとカインを見ながらシオンが言う。
その言葉にそうだな、とカインは頷く。
「お前にしては珍しくしっかりと動いているそうだな」
「あ、相変わらず失礼な奴…私だってやる時はやりますってば」
不機嫌そうな表情を隠さずに返すシオンにカインは心の内で変わらない奴だと呟く。
「そういうカインさんも毎日しっかりと働いているそうで」
「まぁな。やる事は山積みだからな」
「相変わらず真面目だなあ…倒れたら思いっきり笑ってあげるわ」
「なら俺はお前が柄にもなく動きすぎて知恵熱を出したら笑ってやろう」
そこで会話が途切れ、互いに互いを見つめる。
その目には一言では言い表せることが出来ない感情が多く含まれていた。
間の後に最初に口を開いたのはシオン。
「はっはっは。なら今ここで倒れさせてあげようか。もれなくローザに看病してもらえるんじゃないかな?私ってばとっても親切!」
「お前の黒魔法の威力なら俺の白魔法で十分だ」
「ならここで試してみようか。真月での戦いを経て更に強くなった私を思い知るが良い…!」
「良いだろう。さぁ来い!」
同時に武器を構え、互いを見据える。
そんな二人を先程シオンがいた位置から見ている人物がいた。
「もう…またあの二人は…」
武器を構えている二人にローザが小さく息をつく。そんな彼女の横にいるセシルは困り顔のローザとは対照的に笑みを浮かべていた。
「相変わらずだな、あの仲の良さは」
「仲が良いのは良いけれど怪我をされたら困るわ。止めにいかなきゃ」
「そうだな。……それにしてももう少しお互いに素直になっても良いとは思うのだが」
「シオンはその気がないから無理でしょうね。カインは分からないけれども」
長年の付き合いというのも少しは困りものなのかもしれない、とローザは胸の内で呟くと歩き出す。
それにつられる様にセシルも歩き出した時、派手な爆発音が鍛錬場に響いたのであった。









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