無視出来ないのは確かなわけで


「あ、あのっ、カイン様とシオン様って息ぴったりですよね…!」
突然キラキラと目を輝かせながらレオノーラがそう言ってきたものだから、危うく食事用のパンを落としそうになってしまった。
慌てて辺りを見回すが幸い私たちは皆より離れた場所で食事をとっている(正確には私だけが離れていたのだけれど。レオノーラが寄ってきたのだ)
「レオノーラ、急に何を言い出すのかな」
「えっ、あ、す、すいません…!」
「いや、謝る事じゃないんだけども…」
顔をぽっと赤らめぺこぺこと頭を下げるレオノーラを宥める。
「で、急にどうしたの?」
レオノーラの真意を探りつつ食べかけだったパンを千切り、口に放り投げる。
頭を下げるのをやめたレオノーラは少しだけ視線を彷徨わせつつもたどたどしく話す。
「ええっと、あの…今までの道中、お二人を見ていたんですけど戦う時もお話する時もタイミングがぴったりだなぁって、思って…」
「……そ、そう見えるんだ…」
「は、はい!戦っている時なんてお互いのフォローがすっごく上手で、あの…羨ましいなって」
羨ましい?
…あぁ、なるほど。この子ってば…
「可愛い子だなぁ、君は!大丈夫大丈夫いつかきっとパロムと息ぴったりになれるって!」
パロムってばなかなか可愛げのある子を弟子にしたよなあ。
思わず頭を撫でればレオノーラの顔はますます真っ赤になった。可愛い。
こんな弟子だったら私も弟子が欲しくなる。
「や、やっぱりお二人の息ぴったりはお付き合いの長さですか…?」
「ん?どうだろーというか別に息ぴったりとか考えた事なかったしなあ」
「えっ、そ、そうなんですか?」
「うん。それに付き合いで言ったら私はセシルやローザよりカインとの付き合い長くないしね。バロンを離れていた時期があるし」
だからカインは私よりセシルとローザとの方が息ぴったりじゃない?
そう言葉を続けると何故かレオノーラは首を傾げた。
「そ、そうでしょうか…わ、私にはお二人の方が息ぴったりな気がしますけど…」
「気のせいじゃないかな…?」
「二人でなにを話しているんだい?」
不意に横から聞こえてきた声に振り向くとセシルがいた。
「あらセシル」と声をかければ彼は私とレオノーラを交互に見た。
「楽しそうに話をしている声が聞こえてね」
「す、すいません…!」
「謝る事ではないよ。で、何の話を?」
「レオノーラがね、カインと私が息ぴったりって言っててね」
「せ、セシル様もそう見えませんか…?」
レオノーラに問われ、セシルは考える素振りを見せ…にこやかな表情で頷いた。
「あぁそうだね。でも息ぴったりというより…あっいやこれは君にだけに教えてあげた方がいいかな」
そう言ったセシルの視線の先にはレオノーラだ。
ちょっと待て私には教えてくれないのか!
「こらこらレオノーラを贔屓するなセシル」
「ははっ、まぁ良いじゃないか」
「何が良いの!」
「そんな事より早く食事の片づけをしないとまたカインからお小言を貰ってしまうぞ」
「ぐっ……」
正論を言われ黙る。気になるがここはセシルの意見を聞くしかあるまい。
「レオノーラ、後で話の内容教えてよ!」
「えっ、あ、はい!」
空っぽの食器が載ったトレイを持ち、セシルとレオノーラを残して私はその場を後にしたのであった。

……その後、レオノーラに話の内容を聞いたが彼女は頑なに「内緒です」しか言わなかった。
その言葉を繰り返す彼女は物凄くにこやかだったのだがセシルはいったい何を言ったのか…真相は闇の中である。



****
「息ぴったりというよりね、カインがシオンにあわせて動いているんだよ。シオンはまったく気づいていないのだけれど」
「えっ、そ、そうなんですか…!?」
「あぁ、昔からカインはそうなんだ。シオンは剣の心得もあるから前に出たがりでね…危なっかしいんじゃないかな。ちなみにシオンは無意識にカインにあわせてる時があるみたいだが」
「そ、そうだったんですね…!」
「そういう事。これはシオンには内緒だよ。知ったらいろいろと面倒事になりそうだから」
「は、はい…!」









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