解りすぎているお互いの行動思考パターン


昔から好奇心が旺盛な奴だった。それ故に無茶をしてはセシル達や俺に叱られていた。
時が過ぎて少しはおとなしくなったかと思ったが…今も変わっていないようだ。

皆が寝静まった中、こそこそとテントから抜け出す影。
その影に気付き、小さく息をつく。
「どこへ行く」
俺の言葉に影の動きが止まる。そして数秒の間を置いた後にやや機嫌を損ねたような声が返ってきた。
「……昔からカインが私を見つけるの一番だよね」
「お前の行動が分かりやすいからだ」
そうかなぁ、とぽつりと呟き、影…シオンが俺の方へと歩いてくる。
シオンの表情を見るとどこか拗ねたような表情をしている。お前は子供か。
「ちぇーせっかくだから近くをうろうろして来ようと思ったのになあ」
俺の隣に腰を下ろし、シオンはさも残念そうにそう呟いた。
「何がせっかくだ。未知の場所だ、何が起きるか分からんぞ」
「だからこそ、よ!もしかしたら珍しい物があるかもしれないじゃない!」
「…ここなら確かにその珍しい物とやらがあるかもしれんが…1人で出歩くのは感心しないな」
「じゃあカインも一緒に「断る」
その言葉が来ると思ったぞ。何が「じゃあ」だ。俺を巻き込もうとするな。第一俺は今見張りの番をしている。
それを分かっていてこいつは言っているのか。
「即答ですか」
「お前の考える事など手に取るように分かる」
「……そ、それってつまりカインってば私の事すごく見ているって事…!?うわぁ」
「おい最後のはなんだ」
「じょ、冗談だってば…昔より怒りやすくなってない?セオドアに嫌われるよ?」
「何故そこにセオドアが出てくるんだ…」
「いや、なんかセオドアってばすごいカインの事慕ってるからさぁ。慕う要素が私にはわからな…なんでもありません」
話すたびに思うがこいつの口からは俺を馬鹿にする言葉しか出てこないのか?
昔はもっと…いや、昔からこうだったな…
只でさえ連日の戦いで疲れているところに追い打ちをかけられている気がする。
「…カイン?」
「なんだ」
「なんだ、じゃないよ、話聞いてた?」
「何か言っていたのか」
「言ってた!酷いなあ、せっかく心優しい幼馴染がこうして一人ぼっちでいる幼馴染を気にかけて話しかけてあげてるのに」
「余計な世話だ」
「ふん、そう言って実は嬉しい癖に。お見通しなんだからね」
「……お前の頭の中は本当にどうなっている…?白魔法では治らないとなると不治の病か」
「失礼な事を堂々と言うな!あーもう、白魔法で治らない病を持ってるのは貴方でしょうが!ほら疲れてるんだったら寝る!寝ろ!」
ぐい、と顔を近づけてきてそう言い放つシオンに思わずたじろぐ。
近付いてきた顔に浮かんでいるのは怒りだろうか。すぐに感情が表情に出るのは本当に変わらない。
「別に疲れてなど」
「だからお見通しって言ったでしょ。何が起きるのかわからない場所なんでしょ?」
何かを言い返そうとするが、うまく言葉が出てこない。
シオンの言っている事は最もだ、そしてその言葉は先程俺が言った言葉でもある。
だがしかしシオンの言葉にはあっさりと頷けない。見張りの番をしている以上、俺はその務めを果たさなければならない。
「難しい事考えてるでしょ。大方見張りの番の心配かな」
「……相変わらず変なところで勘が鋭いな」
「今は褒め言葉として受け取ってあげる。見張りなんて私に任せればいいじゃない」
「だが」
「だがも何もなーい。ほらテントに戻って寝る!」
なんだったら強引に寝かせてあげようか、と言葉を続けるシオンに思わず反射的に「それは遠慮する」と返す。
ふざけた言動まみれの奴だが黒魔法の腕は一流レベルだ。これ以上疲労はしたくない。
「2時間したら起こせ。代わる」
「はいはい分かった分かった。じゃあそれまでちゃんと寝なさいよ」
にっ、と笑いながらシオンの顔が遠ざかる。
恐らくシオンは俺を起こさない。だから俺は2時間後に自ら起きなければいけない。
そしてそんな俺の考えなどあいつにはお見通しなのだろう。
2時間後に起こる事を予想しつつ、俺はテントへと足を進めるのであった。








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