至福の時間


ドガッ!バキッ!
派手な音が洞窟に響き渡った。




「ワタルー!」

ドガッ!バキッ!!

「あーっ!嘘でしょ!?」

洞窟に響く声にワタルはため息をついた。

「もう〜!せっかく持ってきたのになぁ……」

―持ってきた?

ワタルは首を傾げる。
一体、何を…?
疑問に思ったワタルは来た人物の方へと歩き出した。


「あー…まっ、いいか。」

「レイム、一体何を…!?」

ワタルは目の前に広がる緑に唖然とした。

そんな彼にレイムはにこにこと笑いながら手を振った。

「ワタルー!やっほー!」

「……これはなんだ」

ワタルがこめかみに青筋を浮かべて聞く。

しかし、彼の様子に気づかないレイムは胸を張って答える。

「えっへっへ。クリスマスツリーだよ♪」

「そうか。それで?」

興味もなさそうに言うワタルにレイムはショックをうけた。

「それでって…。ノリが悪いよ、ワタル〜。」

クリスマス。そんな行事などワタルには関係のないことだった。

「ノリも何もオレには関係のないことだ。さっさとその木を外に捨ててこい。」

「なぁっ…!せっかく持ってきたのに…!ひどいよ、ワタル〜!」

ぷぅと頬を膨らませるレイム。
しかし、次には思い付いたような表情をした。

「ワタルがその気ならこっちにだって考えがあるもんね。」

そう言い、モンスターボールを手に持つ。

突然、モンスターボールを手に持ったレイムにワタルは眉をひそめる。

「一体、何をする気だ?」

「その気にさせてあげるんだから!フーディン、出ておいで!」

ボールの中からフーディンがでてくる。

それだけでワタルはレイムが何を企んでいるのか分かった。

「ま、まてレイム!」

慌ててレイムを止めようとワタルは彼女に手を伸ばす。

「フーディン!ワタルに向かってねんりき!」

「レイム!オレが悪かった!!」

ワタルの悲痛の叫びが洞窟内に響き渡った。



結局、ワタルはレイムのクリスマスの手伝いをさせられることになった。

「なんでオレがこんなことを…。」

サンタの帽子を被ったワタルがツリーの飾りをつけながら愚痴をこぼす。

その横ではレイムが上機嫌で同じく飾りつけをしていた。

「んふふ♪クリスマス、クリスマス〜♪」

上機嫌のレイムの横でワタルはやれやれとため息をつく。

―まぁ…今日は許してやるか。

愚痴を言いながらもレイムと一緒にいられることが嬉しかったりするワタルであった。

「わぁ〜♪きれい、きれい〜♪」

色鮮やかな飾りをつけたクリスマスツリーを見てレイムはその場でぴょんぴょん跳ねた。

「ねっ、ワタルもそう思うよねっ!?」

「あ、あぁ…そうだな」

「でしょ?やっぱり綺麗だよね♪」

にこにこと笑顔のレイム。

そんな彼女に自然とワタルの表情も和らぐ。

「ねぇワタル!」

「なんだ?」

「Merry Christmas!!」

―そう言ったレイムの笑顔は最高のプレゼントだった。





(もう少しだけこの時間が続いてくれ)








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