ゆめまぼろし


アポロさまのロケット団復活作戦(という名のラジオ塔乗っ取り作戦)実行の前日。
私はいつも通りにランスさんに書類を届けに行った。
ランスさんの部屋は凄く綺麗だ。ラムダさまとは大違い…おっと、これは秘密だ。

「失礼します」

ドアを開けるとランスさんが業務用の椅子に座って缶コーヒーを飲んでいるところだった。
相変わらず絵になる人だなぁ。

「レイムですか」

「…そんなに嫌そうな表情をしないでくださいよ」

「先程仕事が片付いたばかりだというのに」

机の上に乗せられた紙の束にランスさんはため息をついた。
幹部って大変なんだな、と思う瞬間である。

大変といえば、明日の作戦のことだ。先日、チョウジタウンにあるアジトが何者かに襲撃されたという話を噂で聞いたが…本当なのかどうか。仮に本当だったら、その何者かがラジオ塔に来る可能性は高い。

「あの、ランスさん」

「なんですか」

「明日の作戦、うまくいきますか?」

単刀直入に聞くとランスさんは不敵な笑みを浮かべた。

「当然ですね。この日のために我々は今日まで活動をしてきたのですから」

空になった缶を宙へと投げ、キャッチするランスさん。
あるのは成功するという絶対の自信。恐らく、ランスさんだけじゃなく他の幹部の皆さんもそう思っているだろう。

……けれど、私の中では嫌な予感しかしない。すべてが思い通りにいくなんてあり得ないのだ。
私たちはロケット団。世の中の人々が言う悪ならば、必ず物語などに出てくる正義が出てくるはず。

「貴方は失敗すると思っているようですね」

「…なんだか嫌な予感がするんですよ」

そう言うとランスさんは一言「馬鹿らしい」と呟くと椅子から立ち上がった。
…馬鹿らしいとはなかなか酷い。私は真面目に思っているんだが。

「噂のことを気にしているのですか」

「はい」

「確かにその噂は本当のことですよ」

やっぱり。
思わずそう言うとランスさんは短く息をついた。

「だからなんだというのです。改革に邪魔者はつきものですよ。それを排除し、最後には我々ロケット団が勝つのです」

「そんなにうまくいくんですか?」

「いかなければやりませんよ」

ランスさんは私の手をとり、空っぽの缶を乗せる。
この空っぽの缶みたいにすべてがなくならなければいいけど。

「この作戦がうまくいくためには貴方の力も必要なのですよ、レイム」

「……精一杯頑張らせて頂きます」

もやもやとした気持ちを抱えながら答えると相変わらず自信に溢れたランスさんはゆっくりと頷いた。
この表情をいつまで浮かべていられるのか、と思う傍ら、この表情をずっとさせていたいとも思う。
――まぁ、何にせよ私はこの方々についていくしかないのだ。

「必ず成功させましょうね、ランスさん」

「勿論」











目の前に立っている子供に私はやはりと息をついた。
「やっぱり予感は的中したや」

ねぇ、ランスさん。私たちはここまでみたいですよ。
侵入者の騒ぎは上の階にいるランスさんたちにも届いているだろう。

子供がボールを構える。

私では止められないだろう。だけど、私だってロケット団の一員。
すべては終わるだろうけど、最後の悪あがきはさせてもらおう。

「ここは通さないよ」






ロケット団オンリー夢企画(午前3時)さまに提出した小説でした。









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