こっちをむいて


察して下さい!



「だぁぁぁっ――!」

「うるさい」

突然ごろごろとベッドで寝転んでいたゴールドが発狂し出し、すかさずレイムは読んでいた週刊誌をゴールドに投げつけた。
うおっ、と悲鳴をげながら間一髪で避けたゴールドは胡座を掻きながら叫んだ。

「ひーまーだー!」

叫び始めたゴールドをレイムは呆れた表情で見つめた。
相変わらずうるさい。

「おとなしく雑誌でも読めば?」

「活字なんか見てたってつまんねーよ!」

雨のバカ野郎、と窓に向かって叫ぶゴールド。
ゴールド程ではないが、今日のデートを楽しみにしていたのはレイムも同じだった。
だからちょっとだけ雨を恨んだが降っているのは仕方がないと割り切り、家でおとなしく雑誌を読んでいたのだが…

「だぁぁっ!つまんねー!」

ゴールドは割り切れなかったようだ。
元々普段から外で走り回る方が好きなゴールドなので(レイムはどちらかというと家でのんびりとする方が好きなのだ)、雨というものは嫌い中の嫌いなのだ。

「くっそーよりによって今日降ることねーじゃないか」

せっかくレイムが帰ってきているというのに。
レイムはワカバタウンに住んでいない。幼いときは住んでいたが、父親の都合で引っ越し、今はコガネシティに住んでいるのだ。
久しぶりに会えた恋人と今日は一緒に過ごせるというのに、家でだらだらとするだけなんてつまらない。というか、だらだらするのが嫌だ。

「レイム〜」

再び雑誌を読み始めた(先程とは違う)レイムにゴールドはベッドから飛び降りて背中から抱きついた。

わっ、と短い声を上げるとレイムは自分の首に回された手をつねった。

「いででっ!」

「あ、危ないじゃないっ」

「わ、悪かったよ…なぁ、レイム」

「な、何よっ」

「つまんねー」

つまらないからって人に抱きつくな!
後ろで愚痴るゴールドは気づかないが、今のレイムの顔は真っ赤になっている。
――気づくな、気づくな!

「……お?」

「ど、どうしたの?」

「…いんや、何でもねーぜぇ?」

――気づかれた。
明らかに気づかれた。でなければこんな嫌みったらしい言い方なんてしない。

「レイムちゃ〜ん?なに照れちゃって、」

「うるさーいっ!」

叫びながら腕を思いっきりつねる。
すると先程よりも大きな声で悲鳴を上げるゴールド。

「ばっ、いでぇぇ!!」

「ゴールドが悪いんだからね!」

「はぁ!?オレは本当のことを言っただけ…!?だぁからっ!いてーんだよっ!」

「うるさい、うるさい!」

本当のことでも言っていいことと悪いことがある。
それくらい理解してよ!

「ゴールドのバカ!もう話さない!」

「なっ…!そ、それだけは勘弁してくれよー!」

「知らない!」

完全に不機嫌になってしまったレイムにさすがのゴールドも慌て出す。

「レイム〜機嫌直してくれよぉ」

「……」

駄目だ。完璧に無視をされている。
そもそも、なぜ不機嫌になったのか。ゴールドには理解出来なかったが、とりあえずレイムの機嫌を直してもらわなければ。

レイム〜と呼びながらなんとか反応をしてもらおうとゴールドが懸命に言い出し、なんとか無事に反応を示してもらったのはこの10分後だった。








(なぁなぁ!すまなかったからよぉ〜)(……)








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