変わらない立場
看病してあげましょう。
「約39度」
体温計に表示された数字にレイムはやれやれと息をついた。
その様子に「なんだよ」とふてくされた表情をしたゴールドだったが、次には盛大なくしゃみをした。
「ちょっと〜移さないでよ」
「そーいや、風邪って移せばなお…なんでもありません」
ひゃー怖い怖い、と頭まで布団を被せたゴールドにレイムと彼女の頭の上に乗っているエーたろうは同時に呆れた。
――いつもうるさすぎるくらい元気なゴールドが熱を出しただなんて明日は雨かしら。
「そういえば、ゴールドのお母さんは?」
「買い物に行ってる」
「あぁ、だから寂しくて電話をしてきたのね」
レイムが意地悪にそう言うと布団の中からくぐもった声で「うるせぇ」と返ってきた。
いつもなら全力で否定するのだが、さすがに熱があるとそんな気力もないらしい。
やけに素直なゴールドに内心で驚きながら、レイムは近くにあった椅子に腰を下ろした。
「なんか食べたい物とかある?」
「あー…特にねーな」
「じゃあ、寝なさい」
「それだけかよ!」
ガバッ、とゴールドは突然勢いよく起き上がる。
おおう、とレイムが驚いているとゴールドはレイムを睨み付けた。
「お前は病人をなんだと思っているんだよ!」
「病人は病人でしょ?」
「あ、いや、そうだが…って違う!もうちっと優しい言葉をかけろよ!」
「優しい…じゃあゴールドちゃん、ゆっくりとお休み?」
「き、気持ち悪っ…」
口元を手で押さえるゴールドにレイムは笑い声を上げた。
エーたろうも小さく声を上げている。
その様子にゴールドは拗ねた表情をし――にやりと笑った。
「なぁ、レイム」
「ん?どうし、」
言い終わる前に涙を拭っていた手を引っ張られる。
わっ、と短く悲鳴を上げてゴールドの方へと倒れ込むレイム(エーたろうは空中で華麗に一回転し、床に着地したのは言うまでもない)
「ちょっと、病人っ!」
「熱があるときは汗をかかないといけねーんだよなぁ」
「なっ、ま、まさか…」
ゴールドの思考が読めたレイムは慌てて離れようとするがゴールドの腕が阻む。
病人のクセに、こんなに力があるなんて!
「はーなーせー!」
「はっはっは。このゴールドさまを怒らせた罪は重いぜ」
「バカなことを言うな!」
「いいじゃねーか、添い寝くらいよー」
「嫌だ!風邪が移るっ」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた2人にエーたろうはふはぁ、と小さく欠伸をしたのであった。
変わらない立場
(おとなしくしないと熱あがるよ!)(お前が添い寝をしてくれたらおとなしくしてやるって!)