寒がりガール


寒くて布団から出られないよ…



朝方は冷え込む。
寒がりのレイムには苦痛の時間だ。目覚ましがけたたましく鳴っているのを放置しながらまどろみの世界を漂う。
止めなきゃ、とは思うが布団に潜っている手は心地よい温もりによって出せない。

「うるさい」と小さく呟き、顔を布団の中に潜り込ませる。
少しだけ遠退いた音に満足をしながら再び寝る体制に入る。
ゆっくりと意識が遠退く。
おやすみなさい、と心の中で呟いた瞬間。

「レイム!いつまで寝ているんだ」

ばっ!と布団が一瞬で剥がされた。ついでに目覚ましの音も鳴り止んだ。
布団を剥がされ、体全体を冷気が一気に包み込む。

それのおかげか不幸か、一気に意識が覚醒した。

「さ、ささ寒いっ!」

両腕で体を抱き締めながら、レイムは上を睨み付けた。

「ワタルっ!何をするの、急に!」

そこには呆れた表情で布団を持っているワタルがいた。

はぁ、と息をつくワタル。

「目覚ましぐらい止めろよな」

「だって、寒いんだもん」

「…ほら、早く着替えて」

急かされ、レイムは渋々体を起こした。

今日は一緒に初詣に行くと約束をしていた。
――のだが。

「寒い…」

ぼふんっ、と再び寝転がるレイム。
ワタルの手から素早く布団をひったくり、再び潜り込む。

「レイム!」

「寒いのやだ…」

布団の中から聞こえたくぐもった声にワタルはやれやれと腕を組んだ。

「行かないのか?」

「…行きたいけど、寒いの」

布団の隙間から顔を出し、レイムは膨れた。
ワタルはしゃがみ、レイムと目線を合わせる。

「寒いよーワタル」

「俺だって寒いよ」

「そのわりには平然としているよね…」

「そうかな」

ぴたっ、とワタルの手がレイムの頬に触れる。
その手の冷たさに思わずレイムは飛び上がった。

「つ、冷たい!何をするの!?」

「おっ。どうやら起きる気になったみたいだな」

にっ、と笑うワタルとは反対にレイムは不機嫌な表情を浮かべた。

「最悪!もう決めた!行かないっ」

早口でまくし立て、ふん、と布団に潜り込むレイム。

拗ねてしまったレイムにワタルはしまった、と慌てる。レイムは一度機嫌を悪くしたらなかなか直らないのだ。
…新年早々に喧嘩をするなんて嫌だ。

「レイム」

「……」

「その…悪かった。だから機嫌を悪くしないでくれよ」

レイムからの返事はなく、ワタルの謝罪の言葉だけが虚しく宙をさ迷う。

眉を寄せながら唸るワタルだったが、突然閃いた表情をした。
布団に潜っているレイムはそれに気づかない。

「レイム」

ばっ、と布団の中に光が射し込む。

それに驚いたレイムは慌てて目を開く。すると。

「……何してるの」

もぞもぞと布団の中に侵入してくるワタルがいた。

場所を確保したワタルはレイムの体に腕を回しながら微笑んだ。

「ほら、今日は寒いから」

ギュ、とレイムを抱きしめながら「暖かいな」と嬉しそうに呟く。
それに呆れるレイムは先程言われた言葉を口にした。

「行かないの?」

「本当は行きたいんだけどね。寒いからもう少し経ったら行こうか」

「…しょうがないなぁ。そうしよっか」

ワタルの腕の中でレイムは小さく笑った。









(あーよく寝た…え)(……んー、どうしたの、てか今何時…?)(えーっと…もう夕方に…)(…ワタルのバカ!)








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