遥か彼方まで一緒に


ずっとずっと一緒に。


「ねぇ、スパーダ。スパーダはこのあとどうするの?」

――昼下がり。
バンエルティア号の食堂でお昼の焼き鳥丼を食べながらフルーリは向かいの席で同じく食べているスパーダに突然聞いた。

質問の意味が分からず、分からねぇとスパーダが返すとフルーリはごめんね、と謝ると再度言葉を変えて聞いた。

「世界が落ち着いたら、スパーダはどうするの?」

「あぁ、そういうことか。そうだな…分かんねぇな、まだ」

スパーダの脳裏に先日アスベルに言われたことが映し出される。
ガルバンゾ国の騎士団の勧誘。
その場では考えておくと言ったが正直な話、誘いには乗る気はない。
かといってこれといってやりたいこともないのが現実だ。

「そういうフルーリはどうなんだよ」

「私?私はね、もっと世界を回りたいなぁって。アドリビトムにいるだけじゃ分からないこともあるから」

例えば貧困で苦しんでいる小さな村に物資を届けたりするとか。
などと語るフルーリの表情は輝いていた。
フルーリはいつも未来を見ている。自分が何をすれば他者が喜んでくれるか。どうしたら笑顔が見れるか。
それは自己満足ではなく、本当に心の底から他者の幸せを願っているのだ。

「それでね、スパーダ」

「あぁ?」

物思いにふけていたスパーダは名前を呼ばれ、考えるのを中断し、フルーリを見る。
するとフルーリは少しだけ頬を赤く染めながらぽつぽつと話し出した。

「世界を回りたいんだけどね、私、まだこの世界のことがよくわからないの。だ、だからね…スパーダと一緒に回りたいなぁって」

最後の言葉は耳をすまさないと聞けないほど弱々しい声だったが、スパーダにははっきりと聞こえた。

だから思わず持っていた箸を落としてしまった。

慌ててフルーリが「スパーダはいっぱい世界を回ったって聞いたから」と真っ赤になりながら言う姿にスパーダは数秒の硬直後、噴き出した。

「ス、スパーダっ?」

「お前っ、本っ当に面白いよな…!」

「――っ、むぅっ!面白いなんて酷いー!」

「けどよぉ、その話乗ったぜ」

「えっ?」

スパーダの返事にフルーリはきょとんとした表情をした。
その表情を見てスパーダは笑うのをやめ、フルーリを見つめた。

「このスパーダさまが好きなところに連れていってやるよ」

「…!ほ、ほんと?」

「男に二言はねぇぜ」

「ありがとう、スパーダ!」

花が咲いたかのように微笑むフルーリにつれられてスパーダも微笑む。

約束だよ、と声を弾ませながらフルーリが自身の小指を差し出すのを見て、スパーダも自身の小指を差し出し、優しくフルーリの小指に絡ませた。








(一緒に旅立つのはまだ先のお話)(けれど約束は絶対に忘れない)









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