夢物語は真実を知る


「えーっと、これはなんだっけ?」

「これは「ありがとうございます」だろ」

「あ、そうだった。で、これは…」

バンエルティア号のフルーリの部屋。
ベッドの上で本とにらめっこをしているフルーリと同じくベッドの上で寝転がりながら欠伸をしているスパーダの姿があった。

「つーかよぉ、お前って本当に真面目ちゃんだよなぁ」

「だって字読めないんだもん」

「ンなの他の連中に任せとけばいいだろーが」

「…その言葉、そっくりスパーダに返すよ」

むぅ、と頬を膨らませながらフルーリがスパーダをじろりと睨み付けるが睨み付けられた本人は知らん顔。
そんなスパーダにフルーリはもうっ、と思いながら再び本へと視線を戻した。

「えーっと…せかいをすくったでぃ…はせかいきへまどる?」

「世界を救ったディセンダーは世界樹へ戻る、だろうが…つーか、それってお前のことだろ!勘でいけるだろーが」

「勘で読んじゃ意味ないよ!それに、これ間違ってるもん!」

確かに自分は世界樹へ帰ったが、この文章はまた争いが起きなければ現れないと書かれている。
争いが起きていなくても私はいるのに、と口を尖らせるフルーリ。

そんな彼女にスパーダは確かになと頷くやフルーリが持っていた本を突然奪い取った。

フルーリが呆気にとられるのと同時に本が宙を舞い、音をたてて壁にへばりつくと次に床に乾いた音をたてて落ちた。

その音で我に返ったフルーリはあわわ、と慌てながらスパーダに向かって叫んだ。

「す、スパーダ!?それ、ウィルから借りた本…!」
「嘘っぱちが書かれた本で勉強したって意味がねぇだろ」

フルーリとは対照的にあっさりと言い放ったスパーダは再び呆気に取られているフルーリのおでこにデコピンをお見舞いした。

「いだっ!?」

「オラ、ぼけっとしてねぇで外行くぞ」

「ううう〜っ…ど、どうして…?」

おでこを押さえながら起き上がったスパーダを見るとスパーダはニヤリと笑った。

「本を眺めているより実践で覚えた方が早いだろーが」

スパーダの考えは街中で看板などを見た方が実際にも役に立つというものだ(最も、スパーダ自身が本とにらめっこをするのに飽きたというのも理由だが)

スパーダの意見を聞いたフルーリはぱぁっと表情を明るくさせると「行く行く!」とベッドから離れた。

「スパーダ先生、お願いします!」

「おう、任せとけ」

腕に抱きついてきたフルーリの髪をわしゃわしゃと掻き回しながらスパーダはちらりと床にいる本を見た。

あんな本はもう必要ない。
おとぎ話など所詮はおとぎ話なのだ。
ここにいるディセンダーは世界各地で起こっていた争いを止めたが、ここにいるのだから。
腕に感じる偽りのない温もりがそれを本当にさせている。

後でウィルにこんな本はいらねぇって言わないとな、とスパーダはニヤリと笑いながらフルーリと一緒に部屋を出ていったのであった。





(スパーダ!どっかでおいしい物も食べようね!)(しゃーねぇなぁ。このスパーダ様が奢ってやるぜ)(やったー!)


*君と創る物語様に提出した作品でした。









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