眠りのお姫さま


いつも頑張っている君に。



久しぶりの暇も特にすることもなく、ふらふらと船の中を歩いているとドンッと何かにぶつかった。

「っと」

咄嗟にわりぃ、と言うとごめんなさい、と聞き慣れた声が聞こえてきた。
見るとフルーリだった。

だが、彼女の瞳はうっすらとしか開かれてはおらず、体はゆらゆらと揺れている。

「おい、フルーリ」

そう声をかけると間延びした声でなに、と返ってきた。

「お前、眠いだろ」

「んぅん…眠く、ないよ…」

「全身から眠いオーラを出しながら言っても説得力はねぇぞ」

「ん〜」

既に半分以上夢の中に旅立っているフルーリにやれやれと息をつく。
誰よりも働くフルーリだ。最近もあまり見かけなかったような気がするし、恐らくまったく寝ていないのだろう。
ディセンダーだからではなく、元々フルーリは献身的だ。もはや献身的の意味の範疇を超えてしまっているかもしれないが。

「ったく、お前ってヤツはよぉ…」

仕方がねぇ、と息をつくとフルーリの腕をぐいっと掴む。
するとフルーリの体が傾き、こちらへと倒れ込んできたではないか。

「おまっ、」

「んうー…スパーダぁ、ねむぅー…」

「んなの知って、オイ!?てめ、人の腕の中で寝るんじゃねぇ!!」

べしべしとフルーリの頭を叩くがフルーリに反応はなかった。
すでに夢の中へと旅立ってしまったようだ。

マジかよ、と呆れながらどうするか考える。
といってもやることは1つしかないが。

「しゃーねぇな…部屋まで運ぶか」

安心した表情で眠るフルーリを横抱きにし、まじまじと見つめる。

たまにはゆっくりと休ませてあげたいものだ。
久しぶりの休みをだらだらしているぐらいだったら依頼をこなした方が良いのかもしれない。

「今ぐらいはゆっくり休めよ、フルーリ」

そう声をかけると微かにフルーリが頷いたような気がした。







(今だけはゆっくりと)









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