空を歩いた月曜日









4限終了のチャイムが鳴り響いた。

教室中の空気が一気に緩み、皆一斉に昼食の準備をし始める。

そんな中、伊月は鞄をごそごそと探って顔をしかめた。


(あーあ…)


溜め息をついて席を立つと、クラスメイトに声をかけられる。


「あれ、伊月食わねーの?」

「弁当忘れた。購買行ってくるわ」


苦笑して言うと、級友は微妙な表情になった。


「あー…そっ…か。頑張れよ」

「?」


頑張れ?何を?


怪訝に思いながらも伊月は購買に足を向けた。













***












しまった












(こういうことか…!)



伊月が顔をひきつらせながら見た光景は



野口英世を片手に購買のおばちゃんに群がる生徒の群れ、群れ、群れ

そうか。今日はイベリコ豚カツサンドパン三大珍味(キャビア・フォアグラ・トリュフ)のせを販売している日だ。

相撲部やアメフト部の、とても高校生とは思えないガタイをした奴らを見てげんなりする。

普通のパンを買うにしても、この生徒らを掻き分けて前に進むのは流石に…


(でも昼飯抜きで部活行くのもなぁ)


腹が減ってはバスケは出来ぬ

諦めて生徒の壁に突き進もうと覚悟を決めた時

くいっと制服の裾を引かれた。


「…っ!!く、黒子?」

「こんにちは、伊月先輩」


相も変わらす気配が無い。

まだ内心でドキドキしていると、黒子が持っていたパンを差し出してきた。


「良かったらどうぞ」

「え…いいよ。お前の昼飯だろ」

「もう一度買って来ますから」


うっすらと笑う黒子に、伊月は戸惑いを覚える。

そういえば、黒子はどうやってこの群れを抜けてパンを買ってきたのだろう。

以前一年生がイベリコ豚カツサンド以下略を買ってきた時も、黒子が功労者だったらしいが…

そんなことを考えていると、黒子は伊月の手にパンを押し付け、売り場に向かっていった。


「黒子…」


後輩の姿はあっという間に生徒たちに紛れて見えなくなり、伊月がハラハラしながら待っていると


「伊月先輩」

「うわっ!?」


何故か背後から現れた黒子に盛大に驚いてしまった。


「なっ…なんで後ろから出てくるんだよ…!」

「すみません」


見ると、黒子の手には買ってきたパンが2つ収まっている。


「すごいな、ほんとに買ってこれたんだ」

「はぁ…人波に呑まれてたら、いつの間にか前に出れるので」


なるほど
流石はミスディレクションの黒子

伊月はパン代を払うと、黒子に笑いかけた。


「ありがとな。お礼にジュース奢るから」

「いえ、そんな…」

「礼くらい受け取ってくれよ」


少し逡巡してから、黒子は口を開いた。


「じゃぁ、先輩」

「ん?」

「一緒に食べませんか」


黒子からそんな誘いを受けるとは

伊月は一瞬目を丸くしてから微笑んだ。



「ああ、いいよ」
















2012.8.19
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -