見つけてしまった(勘+木下先生)










ふと、学園の隅を通りかかった時だった。


(あれ…)


こんなとこに人がいるなんて珍しい。


しかもあれって…木下先生?


勘右衛門のように通りすがるだけならまだしも、こんな何も無い場所に居続ける理由など、とんと思い浮かばない。


(何してるんだろ)


ジッと立っていたかと思うと、木下先生は急にしゃがみ込んだ。

何かを、手で弄んでいるようだ。

不可解な行動に首を捻っていると、先生の手元から動物の鳴き声が聞こえてきた。




「なぁん」




(あぁ…まさか)




「木下先生?」




後ろから声をかけると、先生は少し驚いたように振り返った。


「…尾浜か」

「何なさってるんですか?」

「何と言われても…」


先生は黙って子猫を抱き上げる。


「……………」

「……………」






木下先生と子猫。





実にシュールな光景だ。






「…猫、お好きなんですね」

「意外か?」

「えぇまぁ…正直に言いますと」


困ったように答えると、木下先生は珍しく薄く笑った。


「猫に限らず、動物は嫌いではない」


にゃぁと鳴く子猫を一撫ですると、先生はその子猫を離した。


「そろそろ午後の授業が始まるだろう。早く行け」

「…はーい」


勘右衛門の頭をポンと撫でると、木下先生は行ってしまった。


(木下先生は怖いって下級生は言ってるけど…)


五年には案外好かれてるんだ。

別に、理不尽に怒り倒す訳でもないし。
自分の意見を言う時には、ちゃんと生徒の話を聞いてから。対等な立場で話してくれるし。


それに、




「子猫が好き、とか…」





くっくっと笑うと、勘右衛門も教室に足を向けた。


























おまけ








「なーなー、はち。木下先生って動物好きなんだな」


「あぁ…あの人相当だぜ。委員会にもしょっちゅう顔出すし、天気悪い日とか必ず飼育小屋の様子見に行ってくれてる」


「へーぇ?」


「ミィ子に子どもが産まれた時は孫兵に負けず劣らず喜んでたと思うぞ。顔には出さなかったけど」


「やっべぇ、それ木下先生に怒られてる時に思い出したら絶対笑う」


「………俺それやっちまって、罰三倍になったからな」











2012.7.23



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