知ってしまった(月+水)










捏造設定あり
















(やべ、タオル忘れた)


休憩時間にカバンを開いて、伊月は溜め息をついた。

タオルと着替え無しでバスケをするなど正気の沙汰ではない。


「日向ー、ちょっと部室行ってくるね。タオル忘れた」

「おう」


既に汗でビショビショのTシャツで額を拭うと、伊月は部室へと向かって行った。








***












タオル、タオルと…

シンと静まり返っている部室の扉を押し開け、自分のロッカーを開ける。

すぐに目当ての物を見つけ、数枚ひっ掴んでさっさと出ようとした時…


背後でガタッと音がした。


「……っ…!?」


思わずビクッとして振り返る。

当然部室には誰もいない。


(…うん、黒子でもないよな)


では一体何の音なのか

扉の前でジッと鋭い目を凝らしていると、またガタガタと音がした。

その音の出どころは


「水戸部の、ロッカー…?」


そういえば昨日部室の大掃除をした際に、珍しくあの温厚な水戸部が頑としてロッカーを開けるのを拒否していたような

水戸部のことだからそんなにヤバい物は入ってないと思うのだが…


「…ふむ」


水戸部のロッカーの前に立ち尽くしながら考える。

中に何が入っているのか気にはなるが、人のロッカーを勝手に開けるのは気が引ける。



さて、どうしたものか



その時、急に部室の扉がバンッと大きな音を立てて開いた。


「うわっ!?」


その音に驚いて肩を竦ませた瞬間に、ロッカーと伊月の間に巨体がスルリと滑り込んだ。


「びっ…くりしたー。水戸部」

「……………」


水戸部はまるで悪戯が見つかった子どものような表情で、落ち着きなく視線をさまよわせている。

バスケ部の良心、水戸部にそんな表情をさせるのは心苦しい。


「なぁ水戸部…ロッカー、何入ってるの?」


苦笑いで尋ねてみると、水戸部は困り果てたようにフルフルと首を振った。


「それじゃ分かんないよ。俺別に…」



















なぁん





















空気がピシリと凍りついた。

水戸部が面白いくらいにダラダラと汗を流している。


「…水戸部ぇ…まさか…」


アハハと伊月が笑うと




















なぁーん























「……………」


「……………」



もう隠しようがなかった。

ご丁寧にロッカーからはカリカリと扉を引っ掻く音までする。
観念したように水戸部がロッカーの前から退いた。

やっぱり…と思いながら、伊月がロッカーをソッと開けると





中には三匹の子猫がいた。





「ハハ…三匹かぁ…」


「…………」










水戸部によると、一昨日道端で拾ったらしい。寒い空の下、三匹で身を寄せ合っている姿を放っておけなかったと。


「水戸部らしいな」


クスッと笑いながら子猫を撫でてやる。


「でも部活で飼うにはもう2号がいるからなー。水戸部んちも兄妹多いから飼えないんだろ?」


眉を下げて頷く水戸部。
そんな水戸部に、伊月は優しく笑ってその肩を叩いた。


「俺の妹と姉貴に飼える友だちいないか聞いてみるから。きっと飼い主見つかるよ」

「…………」


その言葉に、水戸部は嬉しそうに笑った。
















(水戸部、飼い主見つかったって)


(!)


(良かったな)














2012.7.18







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