かわいいと思う








でもそれは全く違うものなんだって









『 思春期かよ 』










「ふー・・・。」

「あれ、はっちゃんどうしたの?ため息なんかはいて。」


雷蔵がそういうと竹谷は苦笑いをうかべ、その場に座る。


「いやー、また脱走してさー・・・。」

「ああ・・・。」

「でも今回は1年たちががんばってくれてさ、すぐおわった。」

「へぇー。」

「やっぱ成長してるんだなー。今じゃ動物を捕獲させたら学園一だな。」

「八、それ自慢か?」


三郎が鼻で笑いながら竹谷に話しかける。


「おう!しかもうちのこはかわいいしな!他の委員会の子よりかわいいと思う。
素直だし、好奇心旺盛でなによりガッツがある!」

「ちょーっとまった!!八、それは違う。」

「なにが?」

「そうだよ、僕の図書委員会のがかわいいよ!」

「ばっか、うちの三治郎はカラクリが得意で笑顔は誰にも負けない輝いたものがあるし、
虎若は男気と火縄銃の扱いがうまい!一平は優秀であのほっぺたが最高にもっちもちなんだ!
孫次郎は気遣いやさんでフォローがうまい!!どう考えてもうちの子いい子じゃんか!!」


興奮ぎみにそういう竹谷を誰も止めようとはしない。


「ばっか!そんなこといってたら私の学級委員会委員長なんか私を筆頭にみんな優秀だっつーの!」

「三郎が上級生でかわいそうに。」

「え、雷蔵それどういう・・・・。」

「ははは。」

「・・・・ま、まぁいっか。とにかくうちの子のがかわいい!冷静だし!
真面目でちょっちぴりおちゃめな子ばっかりで超かわいいんだぞ!うちの子が一番にきまってる!」

「なにをー!」

「まぁまぁ2人とも。一番かわいいのはうちの子だっていってるじゃない。
きり丸と怪士丸なんてもうどんだけ将来有望株か。それにサラストだって狙えちゃうんだから。」

「将来有望って・・・。」

「今でさえびっくりするようなことしちゃうきり丸なんて中在家先輩もお気に入りの一年なんだよ?
怪士丸だって気遣いやさんだし、きっときり丸といいコンビになると思うんだよねー。
あー、かわいいよねー。たまに頭なでたくなっちゃうもん。」

「「あー、それはわかる。」」


三人がうんうんうなづく中覚えのある気配が廊下からした。


「雷蔵、いるか?」

「兵助?うんいるよー。」


雷蔵が返事しながら障子をあけると、そこには兵助と伊助がいた。


「雷蔵、実はさがしてる本があるんだけど、なかなかみつからなくて・・・悪いんだけど一緒に探してもらえないか?」

「すいません・・・。」


伊助が謝るところをみると、伊助の用事できたのだろう。


「なに?宿題?」

「ああ、でも詳しく教えたくてさ・・・関連の本をと思っていったら見当たらなくて。」

「わかったよ、あ、そうだ兵助はどう思ってるの?」

「なにが?」

「今みんなで一年生自慢してたんだ。」

「一年自慢・・・。」

「みんな自分のとこの一年が一番だって譲らなくてねー。」

「それは雷蔵もだろ!」

「あはは、ま、そんなわけで・・・あ、いいにくいならいいけど。」

雷蔵がそういうと兵助は伊助をみてふっと微笑むと口を開いた。


「・・・伊助はいつも真面目で一生懸命俺の言うことを聞いて仕事をしてくれるからすごくいつも助かってるよ。」

「せ、先輩・・・・。」

「失敗してもちゃんと謝るし、掃除が得意なだけあっていつも倉庫は綺麗で俺だけじゃなくみんなを助けてる。
さりげない気配りもできるいい後輩だと思っているよ。」

「・・・・。」

「俺はそんな伊助が好きで、これからも大事に育てていきたいと思ってる。
だからわからないことがあったらなんでもきいてくれてかまわないから。」

「は・・・はい!僕もっともっとがんばります!先輩をもっと助けたいです。」

「うん、ありがとな。」

「・・・・・兵助・・・いい先輩だね。」

「ああ、言い争っていた俺たちが馬鹿みたいだな。」

「・・・・・・・・。」

「三郎、一年に嫉妬するのはどうかとおもうけど。」

「!・・・し、してないし・・・。」

「へぇーーーーーーーーー〜。」

「・・・・・・・・・し、してないったらしてない!」

「なんの話だ?」

「兵助、実はねー。」

「わー!もうほらおまえら図書室いくんじゃなかったのか!はやくいっちまえ!」

「な、なに怒ってんの?」

「ああ、すねてんだよ。」

「すね・・・?」

「いいから!!兵助はさっさとどっかいけ!!」

「・・・・・・・おう。・・・・いくぞ、
伊助。雷蔵頼む。」

「うん。」


そういうと雷蔵は兵助たちとともに図書室へといってしまった。


「・・・・三郎も、大概心せまいよなー。」

「・・・・黙れこのヤキソバ!」

「うわっ、ひどいな。」

「お前もどっかいっちまえ!虫が脱走しちゃえ!」

「おまっ、そんなこというとまじで・・・・」





「八左ヱ門ー!」





「勘右衛門か?」

「おお、いたいた!大変だぞ。」

「なんだ?」

「虫が脱走しました。」

「えええ!!?」

「ふふーん。天罰だな!」

「にゃろぉ、三郎・・・。」

「は?なに?何の話?」


竹谷はニヤニヤする三郎の頭に軽くチョップするといそいで部屋を出て行った。


「あのやろっ・・・!」

「なにしてんだ、お前ら・・・な、兵助しらね?」

「兵助は雷蔵たちと一緒に図書室。」

「珍しい・・・ついてかなかったのか?」
「・・・・色々あって・・・。」

「ふーん。じゃあ、俺も兵助んとこいるからなにかあったら図書室こいよ。」

「おーう。」


そういうと勘右衛門は図書室に向かっていった。

残された三郎は1人ごろんと寝転がる。




「嫉妬っつーか・・・・・なんつーか・・・・。」





自分は伊助みたいに大事にしてもらいとかそういうわけじゃない。

そりゃあ大事にしてもらえるのならそのほうがいいにきまってるけど・・・

そうじゃなくて・・・・後輩としての感情なんてのは自分には不要で、欲しいのは恋人としての愛情だけだ。


愛だよ、愛。


だから、伊助に対するものに嫉妬しているわけじゃない。

いい先輩っていう伊助の兵助への評価は自分にとっても嬉しいものだし、
伊助に対する兵助の考えも先輩としていい思いだとおもってる。

ただ・・・・

そう、先輩の顔でいる兵助がなんだか遠くに感じてしまって・・・・

自分はそれをみれない。
そのかわりもっと貴重な表情はみてきているのだが。

ただ単に自分の知らない兵助がいるのはなんだかくやしいって話で・・・。

なんだか自分が情けないわけです。

嫉妬・・・になっちゃうのか、結局。

だってこれも愛じゃん・・・。

愛しちゃってるんですよ、兵助を。

・・・って一体誰に対して言っているのだか。




「・・・心、狭いのか・・・・?」

「そうなのか?」

「いや、どうなんだろ。」

「多分俺のが狭いと思うけど。」

「・・・・・・・・・で、兵助さんいつからそこに?」

「いや、ついさっき。」

「雷蔵たちは?」

「まださがしてる最中。雷蔵がさ、忘れ物あるからとってきてほしいっていわれて・・・・・あ、これか。」


そういうと兵助は雷蔵の机の上にある紙を手に取り懐にしまう。


「・・・なぁ、兵助さん。」

「んん?」

「俺と伊助、どっちが好き?」

「頭大丈夫?」

「いたって正常!ちょっぴり貧血気味。」

「大丈夫か?」

「ああ、鼻血がちょっとね。・・・・で、どっち。」

「どっちっていわれても・・・。」


三郎は半身を起こし、兵助に手招きする。


「?」


兵助はいわれたとおりに三郎の前にたつ。


「座って。」

「おう?」


兵助はその場に正座する。


「なんなんだ・・・さぶろ・・・・って!?」


兵助が正面に座るなり、三郎は兵助に飛び込んだ。
そして満足そうに膝の上に頭を乗せる。


「なななな・・・!?」

「・・・・私は・・・・・庄左ヱ門たちと兵助どっちがすきっていわれたら・・・・。」

「・・・いわれたら?」

「・・・・兵助かな?」

「疑問系かよ。」

「だって兵助への愛と庄左ヱ門たちへの愛は全く違うからさ。」

「はは・・・そう、だな。」

「愛してる、は兵助だけの特権だぞ。」

「ああ、知ってるよ。」

「もちろん兵助の愛してるは私の特権ですよね?」

「どうだろう?」

「そうだって兵助の目をみればわかる。」

「・・・・・・・・あんま見るな。」

「嫌だ・・・・・・・・・口付けしたい。」

「・・・だから三郎の目をあんまり見つめたくないんだ。」

「・・・なんで?」

「・・・口付け・・・・したくなるだろ。」

「じゃ・・・しよ?」


三郎は膝から頭を上げて、兵助の額に自分の額を合わせる。

三郎の問いかけに兵助はゆっくりと目を閉じた。

それにあわせて三郎もゆっくりと唇を寄せる。


「・・・・ん・・・・・。」

「・・・・兵助、私だけの兵助・・・・・。」

「な・・・三郎・・・俺さ・・・・。」

「ん?」

「ちょっと庄左ヱ門たちがうらやましかった。」

「なんで?」

「だって先輩の三郎はあの子達しかしらないでしょ?」

「!」


それはさっき自分が考えていたこととまるで同じで・・・・。


「でも・・・・・この三郎は俺しかしらないんだよね・・・・・だったらちょっとは我慢できるかな。
先輩の顔はたくさんの子がしってるけど、恋人は・・・・俺だけ。」


赤く頬を染めてはにかむ兵助はもう可愛らしいの一言では片付けられないくらい凶器だ。
鼻血がでそうになるも、いい雰囲気を壊すのは絶対だめだと思いがんばって止める。


「・・・・俺も・・・兵助と同じことおもってた。」

「え?そうなの?」

「うん。でもそうだよな・・・・・俺も我慢だ。
我慢したぶん兵助といちゃいちゃできるならそれでいい。恋人万歳。」

「・・・・後輩に嫉妬だなんて・・・かっこ悪い先輩だな。俺ら。」

「知られなきゃいいんだって。」


三郎は再び兵助の膝の上に頭をのせ、寝転がる。


「おいおい、これじゃ雷蔵のとこもどれないぞ。」

「もうちょっとだけ。2人っきりの時間だぞ?もっと一緒にいたい。」

「・・・・でも・・・。」

「ほんと・・・もうちょっとだけ・・・。」


兵助の髪を一房つかみ、口づける。


「・・・っ。」

「な、もうちょっとだけ・・・。」

「・・・・・・ちょっとだけ・・・。」


今度は兵助から額を寄せる。

そんな兵助に三郎は優しく微笑む。


「久々知せんぱーい!」







ガラ!!



ゴン!!







「わ!鉢屋先輩!?どうしたんですか床にめり込んで!!?」

「あ、伊助気にしないで大丈夫だよ。兵助、本みつかったよ。」

「お。おおおう!そ、そっか。あありがとな!じゃあこれもかえすな!」


兵助は懐から雷蔵の忘れ物をとりだし、机の上におく。


「先輩?」

「い、伊助!食堂にでもいって団子でも食べながら勉強しような!」

「お団子ですか!?わーい!」

「じゃ、雷蔵そういうことで!」

「うん、またねー。」

「不破先輩ありがとうございました!」


そういうと伊助と兵助は足早にさっていってしまった。


「・・・・・・・・憎い・・・・・・。」

「あはは、もしかしてお邪魔でした?」

「雷蔵絶対わかってて帰ってきたでしょ!?」

「まさか、僕がいちいち三郎たちのいちゃいちゃに反応するわけないでしょ。」

「・・・・・久しぶりのラブラブ・・・・。」

「あれ、そうなの?あははひどうことしちゃったかなー?」
「ほんとだよ!」

「運が悪いってことでしょ。」

「ううう・・・・。」

「明日から実習で忙しいし、また会えないね。」

「今日にでも夜這いしてきまっす!」

「できたらいいねー。」

























「でも今日は伊助が泊まりに来る兵助いってたよー。」

「なんですとおおおおおお!!!!」

「あはははは!」

















嫉妬くらいは我慢できるけど・・・・・











君に触れたい感情は













どうにも我慢ができないんです























「(兵助に)さわりたーーーーい!!」

「うわ、変態。」










― おわり ―







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