▽ 身の程知らずの攻防(体育)
「なぁ、ムカつくよなアイツ」
「ああ…滝夜叉丸?」
「確かにな。自惚れ屋で自己中。さっきの授業でも俺のことすっげ見下してたし」
ある夜更けに、四年生の制服を身に纏った三人組が滝夜叉丸に対してぶつくさ言いながら校庭の隅を歩いていた。
「一回くらい痛い目に遭わせてやれねーかな」
「けど正面きって行っても返り討ちだぜ」
「自惚れるだけの実力があるから更にムカつくんだよなぁ」
くそったれ、と一人が毒づいた時、ふと低学年特有の高い声が聞こえてきた。
「遅くなっちゃいましたね、時友先輩」
「今日の七松先輩いつもより元気だったからね…。金吾、長屋帰ったらお風呂入って早く寝なよ?」
「はーい」
タタタ…と二人が駆けて行ってしまうと、四年生三人組がニヤリと笑った。
「…いーいオモチャがいるじゃねーの」
「行くか」
「おう」
「かっこ悪…」
三人が金吾と四郎兵衛の消えた方へ駆けだそうとすると、背後から低い声が聞こえてきた。
「滝夜叉丸に適わないから後輩の一年二年にちょっかい出そうって?四年が聞いて呆れるな」
「お、お前…!」
「そんなセコい考えしてるから勝てないんだよ。くだらないことしてる暇があったら滝夜叉丸に追いつく努力をしろ」
珍しく三之助が多弁になる。
その刺々しい物言いや目つきに、3人の怒りの矛先が徐々に三之助に向かって行った。
「なんだと…?」
「三年のくせしやがって!」
「別にお前でもいいんだぞ、痛い目みるの」
上級生の怒りを無視して、三之助はふうっと息を吐いた。
「…まぁ滝夜叉丸のことは別にどうでもいい」
お前らごときじゃアイツに何か出来るとは思わないし
隠すつもりもなくボソッと呟いた言葉が火に油を注ぐ。
「けどな、」
怒りが爆発した3人が一斉に三之助に襲いかかってきた。
「金吾とシロは俺の後輩でもあるんだよ…っ!」
* * *
「金吾!金吾っ!大変だよ!!」
一年は組の教室に四郎兵衛が息を切らせて駆け込んできた。
は組の面々が目を丸くして四郎兵衛に注目する。
「と…時友先輩。どうしたんですか?」
教室の奥から金吾が慌てて駆け寄ると、四郎兵衛がその腕をガシッと掴んだ。
「…次屋先輩が…!」
「え…?」
* * *
「三之助。どういうことだ?」
四郎兵衛と金吾が三之助の部屋に行くと、小平太と滝夜叉丸もいた。
滝夜叉丸が目を吊り上げて三之助を問い詰めている。
小平太も口の端を持ち上げながら壁にもたれてはいるものの、その目は全く笑っていない。
「何故お前が謹慎処分なのだ。何があったのか言ってみろ」
「……………」
「三之助!」
滝夜叉丸が三之助の肩を荒々しく掴み、三之助の表情が歪む。
「滝夜叉丸先輩、止めて下さい!」
珍しく四郎兵衛が声を張り上げて二人の間に割って入る。
キッと睨み上げてくる四郎兵衛に、滝夜叉丸が溜め息をついて三之助から離れた。
「滝夜叉丸先輩、その辺にしといてやってくれませんか」
不意に背後から聞こえた声に金吾が驚いて振り返ると、作兵衛と左門がいた。
「富松…お前は何か知っているのか」
「いえ、何も。こいつ俺らにも何があったのか言わないんですよ」
「……そうか」
滝夜叉丸が三之助を見やると、三之助はふいっと顔をそらした。
「滝、三之助が言いたくないのなら仕方ないだろ。今日はもう帰るぞ」
ずっと黙っていた小平太が壁から背を離す。
「…はい…」
部屋から出て行く二人に、金吾が慌ててついていく。
四郎兵衛が泣きそうな顔で三之助を振り返ると、一瞬だけ三之助が眉を下げた。
「…次屋、先輩…」
「……………」
部屋に入ってきた作兵衛がぽんっと四郎兵衛の頭を撫で、部屋から出るように無言で示す。
四郎兵衛がおずおずと部屋から出て行くと、作兵衛がどっかりと腰をおろした。
「…お前が何の理由も無しに乱闘したなんて思わねぇよ」
左門もうんうんと頷く。
三之助は昨夜、四年生三人を医務室送りにした。
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後味悪くてすみません…/^^\
元はといえば滝がウザいことをしなかったら恨みを買うこともなかった
つまり滝のせいだから三之助は何も言わなかったわけです
まぁもっと他にやり方もあっただろうに、ボコボコにしちゃったのは後輩に手ぇ出されそうになって三之助もかなりキレてたんでしょうね^^*
あと、ああは言ったけど滝が悪く言われたことに少なからず怒ってたらいいな、と
三之助好き^///^
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