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【番外】酔ってしまった(勘+四)【没案】










「ふぁ…」


疲れた。今日は一日中実技だったからなぁ。

早く寝よう

そう思って自室に帰ろうとした時だった。


「ん?」


暗い廊下の奥から、小さな人影がこちらに向かってくるのが見えた。
やけにフラフラしているが…


「四郎兵衛?」


高学年の長屋に何故二年生が


「……うにゃ……」


声をかけても四郎兵衛は返事もせず、そのままポスンと勘右衛門にぶつかった。
抱き止めた勘右衛門の腕の中で、四郎兵衛はうにゃうにゃと日本語になってない言葉を発している。

その顔はひどく赤い。


「どしたのシロ…」


何か悪い病気にでもかかったのかと思いながら顔を覗き込むと、四郎兵衛はクフフと笑った。


「おはませんぱぁい…ぼく、はじめてお酒のんじゃいましたぁ」

「なっ」


思わず絶句した。

どこの馬鹿だ二年に酒飲ますなんて

四郎兵衛。体育委員。そして四郎兵衛が歩いて来た先にあるのは、六年長屋。

こんなちゃんぽんをやらかす奴など、決まっている。


(…ったく、何考えてんだあの人は…!)


そんな勘右衛門の心情など露知らず、四郎兵衛はニコニコと笑っている。


「最初にであった人に、お手紙れすー」


小さな手が差し出してくる手紙を開くと、そこには









『誰か五年 七松 竹』









「四郎兵衛、おいで!」


言うが速いか勘右衛門は四郎兵衛を担ぐと、自室へと駆け出した。


「兵助ええええ!!シロ頼む!!」

「はぁ?何…」

「これ!」


スパーンと部屋の戸を開けた勘右衛門から、四郎兵衛と手紙を受け取ると、勘右衛門はダッシュでどこかへ行ってしまった。


「何なんだ…」


呆気にとられている兵助は、とりあえず四郎兵衛に目を向けてみた。
顔が赤い。眼が潤んでいる。表情がぼんやりしていた。

もしかして…


「四郎兵衛、酔ってる?」


すると四郎兵衛は急にクスクスと笑い始めて


「くくち先輩のかみ、きれーれすねぇ」

「………これ?」


もう湯浴みも終わっていたので下ろしている髪を摘んでみせる。
四郎兵衛はフラフラと兵助の背後に回ると、その髪に顔をうずめた。


「いいにおーい…」


そのまま楽しそうに髪をいじり始める。
普段引っ込み思案な四郎兵衛からは信じがたい行動だ。

まぁ、たぶん…酔ってるんだろう

兵助はされるがままだ。


「……………」


勘右衛門に四郎兵衛と一緒に押しつけられた紙を開き、その単語の羅列を読んで合点がいった。


「………あちゃー。はちが巻き込まれたか」


ご愁傷様、と溜め息をついた時、肩に四郎兵衛の頭がコテンと乗った。


「ん?眠い?四郎兵衛」

「…ふぁい…」

「ちょっと待ってろ、布団敷くから」


布団にコロンと転がった四郎兵衛は3秒で眠りに落ち、目にかかった髪を払ってやりながら兵助は考える。


(はちが助けを求めたってことは、恐らくまだ下級生が七松先輩の部屋にいるな…)


体育委員の面子を思い浮かべると、兵助は溜め息をついて立ち上がった。






伊作先輩に、二日酔いに効く薬貰っておこう。








ついでに七松先輩が後輩に酒飲ませたの、チクッておくか。












2012.7.24

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