月光(兵+勘)
血の匂いが体に纏わりついて気持ち悪い
疲れた体を引きずって兵助が深夜の学園の門をくぐる。
皆が寝静まった長屋の廊下を音をたてずに歩き、自室の戸を開けて着替えを取った。
頭巾をほどいて再びソッと部屋を出ようとすると
「おかえり」
眠っていたはずの勘右衛門が布団の中から優しく微笑んでいた。
「悪い。起こしたか?」
「んーん…起きてた。風呂ならもう栓抜かれちゃったよ」
「あぁ、でもこの返り血落としたいから。井戸行ってくる」
「そう…」
月明かりを背に兵助は勘右衛門の顔をじっと見つめる。
「…帰って、これた」
隠そうとはしているが僅かに震えてる声に、勘右衛門はよっという掛け声とともに起き上がった。
歩み寄って兵助の頭をぽんぽんと撫で、ギュッと抱きしめる。
「無事で良かった」