【リベンジ(月+笠)】
「あれ、伊月?」
学校帰りに本屋に寄っていたら不意に声をかけられ、振り返ると海常のキャプテンの笠松がいた。
「えっ…か、笠松さん!?」
思わず裏返った声が出てしまい、慌てて口を押さえると、笠松が笑いながら歩み寄ってきた。
「なんだよ、そんな驚くこたねぇだろ」
「そりゃ驚きますよ…」
伊月の言葉になんでだ?と心底不思議そうに笠松が首を傾げる。
「月バス読んでるのは秀徳の高尾だけじゃないんですよ。全国でも有名な好PGが俺ごときの事を覚えててくれたなんて」
「その"ごとき"のいるチームに負けたんだ。同じポジションの奴ぐらい覚えててもおかしくねぇだろ?」
でも
「あれは…あの試合は、黒子と火神がいたから勝てたようなもんです。俺のPGとしての力は、何一つあなたに勝っていなかった」
試合に勝って、勝負に負けた。
痛感した
全国クラスとの実力差を
今の俺じゃぁ、まだまだ全国には及ばない
黙り込む伊月に笠松はしばらく何も言わなかったが、おもむろに伊月の肩を思いっきりシバいた。
「いっ…!」
「バーカ、海常のキャプテン舐めんなよ?今のお前が俺に勝てるわけねぇだろうが」
肩パンの痛みのせいか、笠松の辛辣な言葉のせいか、恐らく前者だろうが伊月が僅かに涙目で笠松を見やる。
「…だから」
「え?」
「俺たち海常は、お前ら誠凛にリベンジする。だったらお前は…伊月俊は、もっと上手くなって笠松幸男にリベンジしに来い」
ウインターカップでな
そう言ってニヤリと笑うと笠松はひらっと手を振って背を向けた。
「……笠松さん…っ!」
「あ?」
「冬には…覚悟しといて下さい…」
「はっ 返り討ちにしてやらぁ」
そう残して、今度こそ笠松は去っていった。
「……………………」
* * *
「…なんか最近伊月くん燃えてるわね」
「ああ…なんかあったのか?」
「さぁ…?」
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