【一緒に(黒+月)】







大会が近づいてきたとある日の早朝。

伊月は河川敷を軽快に走っていた。
いわゆる自主トレのようなもの。
今日は午後練なんだが無性に走りたい気分だったのだ。

タッタッタッとリズミカルに足を動かしていると、ふいに上着の裾をくんっと引っ張られた。

ぎょっとして振り返ると、そこにはやたら影の薄い後輩の姿。


「うわっ!?」

「おはようございます」


驚いて足を止める伊月に対して黒子は平然と挨拶を投げてくる。


「黒子…お前いつから」

「あそこの橋あたりからです」

「あんなとこから?声くらいかけろよ」


耳につけていたイヤホンを取りながら思わず呆れた声を出すと、黒子が僅かに抗議するような目を向けてきた。


「かけました。でも気づいてくれませんでした」

「嘘」


ああ…イヤホンしてたからか
全然気づかなかった


「そりゃ悪かったな。良かったら一緒に走らないか?」

「さっきからずっと一緒に走ってましたけど」


黒子の返事には苦笑するしかない。


「お互いに存在を認識してなきゃ一緒とは言わねぇの。ほら、行くぞ」


伊月の言葉に黒子は素直に頷いて隣を走る。



朝日が川をキラキラと照らしていた。














おまけ






「伊月先輩…さっき何聴いてたんですか」

「ん?本当にあった怖い話」

「………………」

「お前が服引っ張ったタイミングがよすぎて心臓止まりそうになったよ」

「…すみません」











(こんな気持ちのいい朝に、何でそんなもの聴きながらランニングしてるんでしょう…)
















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