青の祓魔師



燐は誰もいない教室でたった一人、身体をガタガタと震わせていた。別に寒いわけではない、むしろ身体は酷く火照っているほどだ。
あのあと燐は雪男に無理やり足を開かされ孔を慣らされるとある物を挿れられた。それはコードレスタイプのローターだった。
あの小さな卵を長方形のような形にしたピンク色のローターを見た瞬間、燐は暴れて抵抗したがやはりあの命令のせいで尻尾を締め付けられて敢え無く身動きできない状態にされてしまった。

「お昼休みにはとってあげるから。それまで我慢ね」

ニコニコと爽やかスマイルを見せて、雪男は燐の文句を無視して無理やり学校へと連れて行ったのだ。歩く度に中のローターが擦れて酷く辛いというのに、これを昼休みまで、授業中にまで入れておけと言うのかと燐は絶望する。
こんな身体が火照っている状態なのに、授業なんて受けれるはずがない。しかも雪男が気まぐれにスイッチを入れてローターを動かすので下手したら可笑しな声まで出してしまう。

なので燐は雪男に自分の教室へと連れて行かれ、雪男が特進科にまで去ると大急ぎで教室から出て行った。その間、燐のほうへとチラチラ視線が集まっていく。
普段だったら目の端にも止まらないと言うように綺麗に無視をされるのだが、今の燐の状態は明らかに異様だったのだ。顔を真っ赤にさせ、時折身体を跳ねさせて震わせては荒い呼吸を繰り返す。それはかなり体調が悪いか、もしくは情中の事を連想させてしまうものだった。
そんなこととは露知らず、燐はじろじろ見てんじゃねえよと生徒たちを理不尽に怒鳴りたくなってしまう。だがそれもグッと堪えて燐は必死に秘密の場所へと向かった。

そこはただの物置にしか使われていない埃っぽい教室だった。ここだったら誰もいないし、少しぐらい声を上げても多分大丈夫だ。それに少しだけほっとする。

そして一時間目の授業が始まったチャイムが鳴りだした。
授業が始まるのだろうそれに燐は特に思う事はない。別に雪男に授業に出ろと命令されていないのだから。文句を言われる筋はないのだ。
それにざまあみろあの黒子眼鏡とふふんと口の端を持ち上げる。

もう熱く苦しい溜りに溜まった下半身に手を這わせようとするがその手をピタリと止めた。ここは学校だ。普段のあのオンボロ寮とは違う。いつもと違う場所、学校での自慰は酷く後ろめたさがあった。

「…あっ、そういえば命令…」

命令の中で一人で自慰をしてはいけないというのがあった。破ればやはりあのキツイ締め付けが…。
どうすればと考えるが何も思いつかず、燐はただじっとこの埃っぽい物置部屋で耐えることしかできなかった。

「あっ、あ…」

途端にローターが小さく動き出す。誰もいない、ただ温かい日差しだけが燐の身体を映している。たった一人の教室での甘ったるい声は余計に自分の耳の奥に滑り込んで身体を熱くさせた。

前立腺までは入れられていないが、それでも中を緩く振動するその快感がさらに奥をむずむずとさせる。

「ゆ、ゆきおぉ…!」

欲しい。
切なげな声を上げて燐は倒れこむようにして横になりギュッと身体を丸くさせた。動けば余計に中のローターが移動して快感を伴うが、もうなんでもよかった。
はやく昼休みになれと何度も強く願う。だがこんな時ほど時間が経つのは遅い。

「ゆきおぉ…」

何度呼んでも雪男は来ず、ただ来るのは気まぐれにくるローターの振動と快感だけだった。









「悪い子」

涙と涎でボロボロになった燐を軽く叱咤する。雪男はようやく見つけた燐の目の前にしゃがみ込むとデコピンをした。だが長い間焦らされ続けたせいで全身敏感になった燐にとっては痛みだけではなかった。

「ゆ、ゆひおぉ…」

ガクガクと震えて泣きながら雪男のズボンの裾を握る。ようやく昼休みが来たのだ。約束通り来てくれたと燐はようやく解放されるだろう熱に安心する。

「まあ、確かに授業に出ろとは言わなかったけどさ」

「へ、へへ…あたま、いいだろ…」

「せっかく兄さんが授業中アンアン言ってる姿想像してたのに…残念」

「へ、へんたい…」

「あっ、悪口。お仕置きね」

「うっ、ゃ、あっ、ああっ…や、ゆき…や、め…」

「ごめんなさいって言いなさい」

また中で小さな振動が伝わる。それに止めてくれと言うが雪男は止める気配がまったくない。ここは素直に謝るのが懸命だった。

「ごめ、アっ、んぁ…な、ひゃ…」

「うん、いい子」

そう言ってようやくローターを止められてほっとする。身体の力を抜くと雪男が優しく頭を撫でた。

「けどここにいてくれてよかったかも。想像して気づいちゃったんだけど、こうやって虐めるってことは他の人たちにも兄さんのこんな姿見せちゃうってことなんだよね」

「…きづくの、おせー」

「うん、だからこれはおしまいね」

スルスルと雪男の大きな掌が燐の下半身に這わせられるとベルトが緩められ、ズボンの隙間から手を差し込んだ。ゆっくりと後ろの孔に指で触れられ、ジワリとさらに熱が高まっていく。「あっ、ん…!と、れた…?」

「まだ指一本入っただけだよ」

「んぁ、う…アッ、あ、んぅ…」

「…ただ取り出そうとしてるだけなのに、ヤラシー声あげて」

「だ、れのせいだと…!」

「うん、僕のせいだね。ごめんね?」

ちっとも悪いと思っていない謝罪は心底腹の立つことこの上ない。それでも燐は歯を食いしばって堪えた。

「やあっ!!ゆ、ゆき…!?」

「あー、ごめんごめん。奥に押し込んじゃったみたい」

「や、やだ…とって、とって…」

首をふるふると振ると雪男は少しの間燐を見つめてからニコリと笑った。その笑みに嫌な予感がする。

「ね、命令覚えてる?」

「どの、めいれー、だよ…」

「一人で自慰しちゃダメって言うの」

覚えている。だから燐はこの部屋でたった一人でじわじわと迫りくる快感に堪えていたのだ。

「今は二人だよ」

「…え?」

「だから、一人じゃないんだよ」

「ゆ、き…何、かんがえて…」

「シてみせてよ。僕の目の前で」

「なっ…!」

雪男の言葉に一気に顔を赤くなる。雪男の目の前で自慰をしろと言うのだ。ありえないと燐は必死に首を振った。

「そしたらコレ取ってあげる」

グイグイとローターをさらに奥へと押し込んで前立腺へと当てるようにされる。今は止まっているといってもそのわずかに触れた感触だけで燐の身体は熱に震えてしまう。

「ふっ、ぁ…や、だ…」

「やだじゃない。やるんだよ、命令だからね」

そう言って雪男は燐の中から指を引き抜くと、また燐の身体が震えて小さな甘い声をあげた。燐はそれでもいやいやと首を振って拒否するが雪男はそれを許すほど優しくはなかった。

「いいの?尻尾、またぎゅーってされちゃうよ?」

「…や、だ」

あの痛みはそう何度もやられたくないほどの苦痛なのだ。まるで脊髄の全てを締め付けられているかのような訴えようのない痛み。それがどうしても嫌で燐は恐る恐ると自分の下半身に目を向ける。

「う、うぅ〜…雪男のアホ」

「はいはい、早くする」

ぐすぐすと泣き出して燐はもうベルトも緩められたズボンを膝まで下ろす。

「…って、お前は何してんだよ」

「いや、お腹すいたから」

燐がぐずぐずと泣いて行為をしようというのに、雪男は一人弁当を広げ始めていた。

「俺だって腹減ったつうの!!なのにお前は俺一人こんなさせて昼飯とか…!!」

「いやぁ、性欲と食欲が同時に摂取できるって中々ないよね。場所がちょっと埃っぽいのがアレだけど」

贅沢は言えないよねと雪男はとうとう弁当の白米を口に運ぶ。これはある意味放置プレイとも言えるんじゃないかとその美味しそうな弁当をひったくって食べてやりたい気分だった。

「僕のことは気にせず、兄さんも一人で楽しんでてよ。僕は僕で兄さん手製のお弁当食べて兄さんをオカズにしておくから」

「〜っ、ホクロメガネ、変態」

「兄さん、今だけだよ。そんなに悪口言っても尻尾ぎゅってならないの」

「…なんで?」

「僕が許してるから」

なんだか分かったような分からないようなと燐は首を傾げた。どうやらこういう命令のアウトかセーフかの基準は雪男の判断によるらしい。
パクパクと何喰わぬ顔で普段と変わらず昼食を取る雪男を横目に燐は背を向けて下器に手を伸ばした。

「ちょっと、何してるの。僕に見せるに決まってるでしょ。あと寝転んだままじゃなくて膝だちにする」「…ですよね〜」

そう言うと思ったとそれでもせめてもの抵抗と思って燐は背を向けていたのだ。燐は渋々とまた雪男のほうへと向き直し、言われたとおり膝だちになると下器に手を伸ばす。もう先走りが溢れているそれが雪男の視界にも入っていると思うと恥ずかしくて堪らない。
だがそれでも燐は自分のそそり立つ中心に手を這わせ、ゆっくりと上下に扱きだす。そうするとだんだんと先走りがコプコプと溢れだし、甘い声が自分の喉から自然に出てくる。
静かな部屋でニチャニチャと湿った音がより響いて燐の羞恥をより濃くさせた。

「ふぁ、あ…ゆき…」

「うん、ちゃんと見てるよ」

「ゆきおぉ…あ、ンンっ…ン、アッ…」

「後ろもちゃんと弄らないとイケないよね」

そう言うと雪男はポケットの中にあるリモコンを取り出すと、燐に見せびらかすようにしてそのスイッチを押した。前立腺に触れているそれが突然震えだし、燐はビクンと身体をしならせる。

「ひぃあ!!っ、ア、アアっ!!ゆ、ゆひ、…や、や、だ…」

「どうして?こんなにも嬉しそうにしてるじゃない」

嘘はいけないよと指でツンツンと燐の熱の中心をつついた。それにまたビクリと身体を跳ねさせる。確かに燐のそれは先程よりも明らかに先走りの量が増えていた。
指摘されたことに恥ずかしくなり、思わずギュッと瞼を閉じるが閉じても現実は変わらない。

「や、やら…んァ、ひぅ…!」

ガクガクと膝が震え、燐はとうとう膝をついたまま上半身を前に倒れさせた。雪男の前で頭を付くような形になり、兄としてより一層屈辱的な格好となっている。だが今はそんなこと燐にとってはどうでもよかった。

「ひぁ、ゆ、き…や、アアッ…!ゆきお、の…」

燐のそれはもう我慢の限界だった。まだ少ししか扱いていないが、それでも中に存在するものが前立腺に触れて振動を伝える度に熱を膨らませていく。
挿れてほしい、もう何でもいいから助けてほしいと雪男の服の裾を握って縋ると雪男は弁当の蓋を閉じた。

「ところで兄さん、そんなに声上げてていいの?言っておくけど、ここ学校だよ?」

雪男の言葉により燐は我に返る。そうだ、ここは学校だったのだ。よくよく耳を澄ませば自分の荒い息遣い以外に廊下の方からは笑い声が聞こえる。それに顔を一気に真っ赤にさせ、燐は握っていた裾を大慌てで放した。

「テ、テメッ…ひぁ!!〜っ…!」

身体を起き上がらせると中に入っていたローターが動き出し燐は身悶えた。さらに声を抑えるために両手で口を塞いでやる。ギロリと雪男を睨みつけてやると雪男はニコニコと笑うだけだ。

「だから、あんまり声をあげないようにね?」

そう言うと燐のそそり立つそれにツンと箸で突いてやった。弁当はしまわれていたが、箸だけはまだ雪男の手の中にいて、それを使ってビクビクと震え敏感になっている燐の身体の部位を気まぐれに突いていく。

「おっ、まえ…ひっ、はしを、そんなふ、うに…つか、ぁう、な…!」

「それじゃあこう使えばいい?」

雪男は箸を握り直すと燐の硬くピンとたった乳首を掴んだ。それを引っ張ったり先を押したりとそれはもう楽しそうに弄りだす。
燐はそれにいやいやと首を振るが、それでもジンと身体の内が熱くなっていく快楽に逆らう事は出来ない。

「兄さん、手が止まってる。ちゃんとやって」

「ま、まだやんのかよ…」

「兄さんがイクまで止めないよ」

なんて奴だと目の前の末恐ろしい弟を睨みつけるが、それもまた箸で乳首をカリカリと掻かれて無力化させてしまう。溜りに溜まった熱を早く解放させたくて、燐はもう雪男に止めてもらうことも全てを諦めてまたそそり立つ中心に手を這わせた。
中ではローターが動き回り、乳首は雪男が箸で弄り、確実にいいポイントで自らのものを扱く。
鈴口を弄りヌルヌルとした感触を指で感じるとカリの部分を軽く掻いてやる。上からも下からも快楽で責められ、燐はとうとう熱を放った。

「う、アアッ…っ、はぁ、ゆ、き…」

フラリと雪男のほうへ倒れると優しく受け止められる。中のローターも止められ、燐の孔のほうへと手を這わせるとそれを簡単に抜き出す。

「お疲れ様」

「…マジ…つか、れた」

ぜえぜえと荒い息をしながら燐は文句を言うが、その態度とは裏腹に尻尾のほうはスリスリと雪男の足を撫でている。無意識なのだろうそれに燐は気が付いておらず、雪男はクスリと小さく笑った。

「とりあえず、今はこれぐらいにしとこうか」

「お、おう…」

「不満?」

「な、何言ってんだよ!馬鹿!!」

「だって、なんか物足りなさそうだったから」

「…気のせいだ」

そう言っていそいそとズボンを履くと自分の射精したものの後始末をしていく。イカ臭くないだろうかと念のために匂いを嗅ぐがまったく分からない。
実を言うと燐はまだ続きがあると少し期待していた。もうとっくに慣らされているだろう後ろ。そこにあの熱を挿れられるものだと思っていたから内に宿るほうの熱が少し不完全燃焼気味なのだ。

「こっちは、また夜にね」

燐の後孔をズボン越しに優しく撫でられ、チュッと音をたてて頬にキスをされる。そうすると燐の顔がみるみる内に赤くなっていき、キスをされた頬を抑えるとチラリと雪男を見てただコクリと頷いた。

「ふふ、いい子」

ニコリと笑われ、頭を優しく撫でられる。
決して期待していた訳ではない。言うなればこれは命令のせいなのだ。
身体が熱いのも不完全燃焼気味なのもこうやって素直にいう事を聞いてしまうのも。
全部全部あの命令とノートと雪男のせいなのだと燐は必死に心の中で言い訳をした。


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