2 ワタシの初恋。

「……何か言いたいことあるか」
『別に、ない』


新宿警察署。
刑事課。オフィスの隅の方。

「まぁまぁ、今回もナツちゃんが一方的にやられただけなんですから、そんな怖い顔しなくても良いじゃないですか。」
「三輪山は黙ってろ。」
『……。』

結局、また見つかった。
あのリンチの最中止めにきた警察官によって私たちは捕まり、君の担当は叢雲刑事だからと私だけここに連れられた。担当って、なんで刑事に担当されなくてはいけないんだ。多分何度も万引きとケンカを繰り返して直す気が無いから手に着かなくなって刑事の叢雲にまわされたのだろう。困ったことに万引きは癖だったりするのだが、いつもいつも叢雲に言ってもあきれた顔をされる。

「ナツ、なんで抵抗しなかった?」
『…相手が強そうだったから。』
「大人の男を1人で倒せるお前が、女子高生3人にはかなわないって思ったのか?」
『そーです。』
「たく…、防御くらいはできるだろうに、またこんな傷つくりやがって。なーにが強そうだったから、だ。」
『痛っ…、』

ネイルのついた手で平手打ちされたから、頬は2本の赤い線が出来て赤く腫れていた。まだ血がでて痛いのに叢雲はいつもケガした所を触ってくる。手当ては三輪山さんがやってくれたり叢雲がやってくれるけど、大きな叢雲の手が絆創膏をキレイに貼るのは見ていて楽しい。それに頬に触れてる叢雲の手が少し冷たくて、頬の熱がひいてく気が、……って。

『(何考えてるんだ…!)ちょ、手、冷たいし痛い!』
「あぁ、悪ぃ悪ぃ。結構熱くなってるな。家帰ってもよく冷やしとけよ。」
「ナツちゃん、はい保冷剤。」
『っ、…三輪山さんありがとう…。』

渡された冷たい保冷剤をくるんだタオルを頬に当てながら、触れていた叢雲の手の感触を忘れようとする。が、なかなか忘れられない自分に嫌になる。顔に血がのぼっていくのが分かる。は、恥ずかしい…!

「ナツ、女子が顔に傷作って痕でも残ったらお嫁に行けないぞー。」
『…余計なお世話。』
「それに、お前一応高校生なら好きな奴くらい居るんだろ?」『!、い、いない。』
「ほー、いないのかー。ま、顔赤くなってちゃ説得力ないけどな。」
『…うざっ』

好きな人。
もちろん、私も高校生で女の子なのだ。恋のひとつふたつしてきた。…と言いたい所だが、実は今している恋が、初めての恋なのだ。この気持ちを恋と言うのか分からないが、多分そうなんだと思う。そして、初恋というべきこの恋が叶うことも無いだろう。なぜなら初恋だし、相手が、

「好きな奴いんなら、そいつに良い所見せるためにも癖直さなきゃな。」
『…物取っちゃう癖は直んないもん。』
「もん、じゃねぇ。直さねーとだめなんだよ。ほれ、反省しながら帰るぞ。」
『1人で帰れるって、』
「こんな遅くに未成年の子供1人で帰せるわけねぇだろうが。」
『……』

叢雲に鞄を投げて渡される。
以前、一人暮らしをしていることがバレてから保護者を呼ばずに叢雲に送られるようになった。いつも小言を言われ反省しながらの帰りになるが。叢雲と2人で帰れること、それだけで気持ちが上がり、嬉しくなってしまう。子供あつかいされるのは悲しいけれど、子供だというのは本当のことだから、諦めている。

『…三輪山さんありがとうございました。』
「いえいえ。警部に気をつけて帰ってね。」
『な!、…お、おやすみなさい…!』
「おやすみなさい。(あいかわらずナツちゃんわかりやすいなぁ)」
「おい、早くしろ。行くぞ。」
『ん。』
「叢雲警部、お疲れさまでした。」
「おう。」


私の初恋の人。
それはこの強面だけど刑事で、私の担当になっているウルフ刑事こと、叢雲です。
この恋は叶うことが無い。
でも、
少しは、
ちょっとだけなら、
期待しても、良いですか?




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