(青峰視点)



大学の講義もなくたまたまバイトも入っていなかった暇な休日。

黄瀬がいつもぐちぐち言ってくるから、たまにはと思い洗濯や掃除をしてやった。それでもまだお昼過ぎだったので、同じく暇だとふんだ火神を誘ってストバスをしていたら偶然にも高尾が通りかかった。

久しぶりのメンバーに気分が上がり、予想外に燃えてしまった。二人とも高校生のままかと錯覚するほど衰えていなくて、素直に楽しめた。途中で学生らしき奴らが来たので譲ってやろうと思っていたら、高尾が持ち前のチャラさで一緒にやるかなんて誘いやがった。流れで3on3をやることになり、内心かなりめんどくさかったが、もう一回もう一回!とすがってくる姿が数年前の誰かさんとかぶって、断り切れなかった。もちろんあいつのような相手にはならないけど、筋は悪くない奴らだった。

時計を確認するともう7時だ。確かに大分暗くなっている。黄瀬が帰っているとは思わなかったが、今日は夕食を作ってやろうと考えていた。

「わり、そろそろ帰るわ」

「まじかよ!飲み行かねえの?」

残念そうな顔をする高尾に次な、と言うと黄瀬によろしくーと手を振られた。
残った火神はこれから付き合わされるんだろう。わりいな。



  *  *  *


夕食を作って風呂に入って、テレビを見ながらだらだらしていると、11時を過ぎていた。
黄瀬はまだ帰って来ない。今日の撮影は長引いてんのか。

いつの間にかうとうとしていたみたいで、玄関から聞こえる物音で目が覚めた。

「青峰ーっち。疲れた〜」

鞄やらコートやら色んなものを投げ捨てながら近付いてきた黄瀬は、ソファで横になっていた俺の上に、どさりと倒れてきた。
ふわりと香る同じシャンプーの匂いと、いつもはしない柑橘系の香りが鼻にかかる。

「お疲れ。お前変な匂いすんぞ、風呂入れ」

「疲れたっス。ちゅーしてくんないと動けない」

「ガキかよ」

目の前にある端正な顔の、形の良い顎に触れると、黄瀬が目を閉じた。リップ音を鳴らし触れるだけの可愛らしいキスをすると、満足そうに目を細め笑った。
黄瀬、と呼ぶと何スかと穏やかな声で返すもんだから、無性に愛おしく思った。金色の猫っ毛がきらきら輝く。

「おかえり」

「…ただいま」

黄瀬は更に幸せそうに笑って、俺のこめかみにキスをした。んー青峰っち良い匂い、とかなんとか言って耳や首に一通りキスをし終わると、ひょいと立ち上がった。

「ご飯は?もう食べた、っスよね?」

「あぁ。もし食うならてめえのもあんぞ」

「えっ、もしかして青峰っちの手作り!?食べたいっス!」

元気じゃねえかと思いながらも俺も立ち上がると、黄瀬がキッチンまで付いてこようとしたので、振り返った。手を伸ばして俺の襟足をもてあそんでいた黄瀬は、きょとんと不思議そうな顔をしている。

「暖めといてやるから、先に風呂入ってこい」

「そうっスか。じゃあお言葉に甘えて」

黄瀬が高そうな腕時計や精巧なチェーンのネックレスなどを次々と外していく様子に思わず見とれてしまった。
腕時計を外した後の手首を撫でる仕草も何かを確認するように首筋に触れる指先も、全てが色気全開であてられる。黄瀬がエロいのが悪い。不可抗力だ。

「青峰っちの目、えろーい」

茶化すようにそう言うと、黄瀬はゆっくり近付いてきた。俺の首に両腕をまわすと唇が触れるか触れないかという距離まで顔を近付けて、妖しく微笑んだ。

「俺明日休みなんスよ、青峰っちは?」

「俺より俺のスケジュール把握してる奴が何言ってんだ」

「じゃあ、分かるっスよね」

ヤろ。耳元で囁かれた一言に今すぐ食卓の上に押し倒してやろうかと思ったけど、またも嗅ぎ慣れない柑橘系の整髪料の香りが鼻をくすぐったのでグッとこらえた。
スタイリストだが知らないが、こいつの髪に無断で触れた奴の影がちらつきながらのセックスなんてお断りだ。

「風呂に入ったら考えてやる」

「つれないっスねー」

パッと両腕を離し子どものように口をとがらせる姿は、さっきの艶かしさの欠片もない。

鼻歌を歌いながら風呂場に向かう黄瀬を見て、あいつマジで自分のエロさに気付いてねえのかも、とちょっと心配になった。



  *  *  *


風呂から出た後の黄瀬は、いつものシャンプーとボディソープの匂いだけで気分が良くなった。
その後は、俺が作った肉じゃがを美味しい美味しいと完食し、いつでも俺に嫁いでくれていいっスから!と戯言を吐いていた。逆だろバカ。


黄瀬は、大学と連日の仕事の両立がたったか至るところの筋肉が痛むようで、カーペットの上で横になり、あーとかうーとかうめきつつ自分で二の腕を揉んでいた。

「マッサージしてやろうか?」

「今日の青峰っち、優しすぎて怖いっスよ」

「あっそ。やらなくていいんだな」

「冗談っスよ!やってほしいっス!」

ソファの上にあったクッションを一つ渡すと、それを抱きかかえるようにしてうつぶせになった。均整の取れた、だけど毎日バスケをしていた頃よりは少し細くなった身体が無防備に晒される。
服の下に隠れている、真っ白でどこを触っても敏感に反応する素肌を思い出してムラッとした。それを紙面上ではなく最後に直接見たのは、二週間ほど前だった。


肩と腰を重点的に揉んでいると、黙って気持ちよさげにそれを享受していた黄瀬が喋り始めた。

「青峰っちは今日何してたんスか?」

「あー…火神と高尾とバスケした」

意外とヤキモチ焼きのこいつに、高校生の話はしないでいいだろ。ぎゃんぎゃん喚かれても困るし。

「高尾っちも!?いいなぁー!今度は絶対俺も呼んで!!」

「時間が合えばな。忙しいだろ最近」

「仕事増えるのは嬉しいんスけどねー…青峰っちと一緒にいる時間が減るのが残念っス」

これでほんとに無自覚だったら、恐ろしい。破壊力抜群の一言にあやうく下半身が反応しかけた。

「きーせ」

黄瀬の上に乗ると、ぴたりと身体を合わす。耳元で名前を呼び息を吹きかけるとくすぐったそうに身動ぎした。

「ここもマッサージしてやろうか」

ズボンの上から股間を撫でると、んっと可愛い声が聞こえた。

「青峰っち親父くさいー」

文句を言いながらも、自らあお向けになるこいつも満更でもないんだろう。

首を舐めていると「痕は駄目っスよ」と念を押す口調でたしなまれた。分かってるっつの、何年一緒にいると思ってんだ。

「俺が代わりにつけるから」

黄瀬は、首筋にキスをして、そこそこ強く噛みやがった。ちょろりと出た俺の血を熱心に舐められて変な気分になる。
もういい、と引きはがすとあんまり目立たないと不満そうに痕をなぞった。

「青峰っちが黒いせいっス」

「自分は痕もつけさせねえくせに文句言うな」

「青峰っちの印はこれでいいでしょ?」

青いリングピアスを見せつけるように左耳を向けるので、遠慮なくそこを舐めまわすと組強いた黄瀬の力がどんどん抜けていくのが分かる。
耳の中に舌を出し入れするとピチャピチャと水音がした。黄瀬は、ダイレクトにその音が聞こえるのに感じているのか、ふるふる震えている。

「ひ、ぁっ……も、いいからぁ…早く…」

いやらしく腰をふってすっかり固くなったそれを俺の太ももに押し付ける。

「まーた耳で勃ったのかよ」

相変わらず敏感ですね黄瀬くん、とこいつが大好きなテツの口調で言ってやると、一瞬で顔を真っ赤にさせた。

「いじわるっス…」

「好きなくせによく言うぜ」

薄手の寝間着をまくりあげ、乳首を指でかするようにいじると面白いくらい身体が跳ねる。

「固くなってんな」

「は、ぁっ、や……ちゃんと両方、んぁっ……触って…!」

涙がたまった瞳と真っ赤に熟れた顔で懇願されたら断れるはずもなく、右側を強くつまんでもう片方は服の上から噛んだ。

「あ、ぁっ!ひゃぁんっ」

きゅっと引っ張ったりつねったりするたびに白い喉を反らし、甘い声で喘ぐ。
赤くなりピンと尖っているはずのそれが見たかったので、上を脱がすと、更に幾分か触りやすくなった。乳輪をなぞるとぴくぴくと身体が揺れる。すげぇかわいい。
黄瀬が強く瞼を閉じると、涙が睫毛に染み込み、長い睫毛がいくつかの束になる。それが何だか美味しそうだったので、口付けて涙を舌ですくいあげた。甘くて透き通った味がする。

「黄瀬」

「なまえで、呼んで…っス…」

息を荒げつつも黄瀬は真っ直ぐ見つめお願いしてきた。そのエロい姿に俺の下半身は今度こそ正直に反応した。

「涼太」

寝間着用のゆるいズボンを容易く下ろし、すでに先走りで濡れている性器を片手で包みながら名前を呼ぶと、無意識にそろそろと股を開いた。俺好みのやらしい身体になったもんだ。

「あ、あぁっ、……だいきっ…」


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