(黄瀬視点) 「えええええ!!?」 「うっせえ!!」 待て待て待て。とりあえず状況を整理しよう、大丈夫俺は何でも出来ることが悩みのイケメンだから!よし落ち着いて思い出そう。俺は久しぶりの青峰っちとのデートにウキウキして朝早く起きて電車に乗っていつものごとく青峰っちの家に来て、…正確には、行こうとして道すがら街路樹とにらめっこしていたあからさまに「近所の悪ガキです」といった雰囲気を醸し出している色黒の子どもと出会い、その子がふとこちらを振り向いて目があったとき胸がドキンと…って違う!!! 「青峰っちぃぃいい!?」 「?何で俺の名前知ってんの」 青峰っちの隠し子?!!俺というものがありながら誰と!!いやありえない、この子どう見ても小学生だから、一年生だとしてもえーっと青峰っちが10歳の時の子ども!?えっない、ないよね…?青峰っち初体験早っ!てか初体験で中出しって!!いやいやこの説はない。それにしても顔似てるなーもしや親戚の子とかかな。普通に考えてそうだよな!俺何バカなこと考えてたんだろ、うん見てない、ちょうど青峰っちと同じ場所、うなじの下あたりにあるホクロなんて俺は見てない。 「君、下の名前なんて言うの?」 否定してくれと全身全霊で祈りながら、モデルスマイルを浮かべて聞くとすごく不審そうな表情になった。この子が青峰っち本人とか隠し子より何倍もあり得ない。じゃあ俺のかっこよすぎる彼氏はどこ行ったんだよ! 「…大輝。小学校二年生」 聞いてもいないのに、律儀に年齢まで教えてくれた。人に尋ねられるたび、お母さんに抱き合わせで言わされているのかもしれない。……いやいやいや!現実逃避すんな俺!え?まじで?青峰大輝? 「…青峰、…くん。えーと、もしかしたら誕生日8月31日だったりする…?」 答えを聞きたいような聞きたくないような気持ちで、恐る恐る聞くと、高校生になった彼よりだいぶ大きい目をくるりんと丸くさせた。持っていた蝉捕り網を刀のように俺に向けた。 「お前ヘンシツシャかっ!さつきがなんか言ってたぞ!」 この子、ほんとに青峰っちだ… 顔そっくり、同姓同名、誕生日も一緒、しかも桃っちも知ってるらしいとくればさすがに認めざるを得ない。力が抜けてその場にへたれこんでしまった。アスファルトの熱が夢じゃないと言っていた。 「お、おい!大丈夫か?」 いきなり座り込んだ俺にびっくりしたらしい小さい青峰っちは、警戒体制を解いて俺へと駆け寄ってきた。俺が座って青峰っちが立っていても目線が近い。幼くてもところどころ面影が残っていて、やっぱり少し胸が高鳴る。 ぺたり、とキュンとするサイズの暖かい手が俺の額に触れた。 「ねっちゅうしょーか?」 心配そうに眉をひそめた青峰っちの顔がどんどん近付いてくる。あ、やばい。見覚えのある瞳の色に理性をほどかれそうだった。え、ちょ、何言っ 「うーん、熱い、か? わかんねえ」 額に吸い寄せられたのはもちもちした頬っぺただった。なんとチビ青峰っちはどうにか俺の熱を測ろうとしているみたいだった。変な想像をしてしまった自分が恥ずかしい。ねぇチューしようか?に聞こえたことは墓まで持っていきたい。 頭を掴まれしきりに角度を変えながらほっぺを押し付ける、という行動が可愛すぎて抱きしめたくなったけどどうにか押さえた。今の俺は「知らない奴」だから、そんな事しちゃったら本気で変質者になりかねない。 「あ、青峰っち!大丈夫だから!」 弱く目の前の胸をおすと、青峰っちはようやく離れてくれた。 「お前さ、青峰っちってなんだよ?俺、お前知らねーし…多分」 少し自信なさげに付け足した後、口を尖らせた。か、かわいい…!!今まで青峰っちはアルバムさえ見せてくれなかった。彼のノースリーブが風に拭かれて、ぺったんこの腹がチラリと見えた。ここは天国かもしれない。 「あー…えっと、あれっス!青峰っちのお母さんとお友達で、よく話聞いてたんスよー。それで会いたくなって一緒に遊ぼうかなぁと思って…」 さすがに無理があったかも、と苦笑しながら見ると、青峰っちは夏の太陽にも負けないくらいキラキラ笑った。 「なんだ!最初からそー言えよ!あっ、お前の名前は?」 「黄瀬、黄瀬涼太っス!」 「分かった、りょーた、な。あと、その青峰っちって言うのはずいからやめろ。大輝でいいから」 「い、いや…青峰っちのままでお願いします……」 「なんで?」 「…恥ずかしいからっス」 立派に成長した後の低くてエロい声の欠片もない子どもの声でも、その顔で下の名前で呼ばれただけで動悸が速くなったのに、俺まで名前で呼んだら頭がぐるぐるしそうだ。 「まっ待っててやるからさっさと慣れろよ、りょーた!それで何して遊ぶ?」 俺が今まで一番ピュアだと思っていた中学時代より満面の笑みで笑うと、親の知り合いということですっかり心を許したらしく、未だ座り込んだままだった俺の背中に抱きついてきた。おんぶしろ!と言いながら張り付く高い体温に心臓が爆発しそうなくらい萌えた。今までファンの子に言われ続けても理解できなかったけど、きっと萌えってこういう感情だ。 なんで幼い頃の青峰っちが今ここにいるのか、高校生の彼はどこにいるのか、何も分からないけど、今を楽しもうと思った。きっと神様がくれたご褒美っスよ! 「りょーたは蝉とー、カブトムシとー、ザリガニならどっちがいい?」 耳のすぐ側で聞こえる楽しそうな声にもはや愛おしさしか感じない。息が耳にかかり、くすぐったい。 いつもは意識的にやられるその行為を思い出して、顔に熱が集まった。うぅ、あのエロエロ大魔人にもこんなに可愛い時期があったんスね… 「青峰っちが一番好きなとこでいっスよ」 後ろにいる彼を支えるための手を伸ばして、おんぶしながら立ち上がると、青峰っちは蝉捕り網や虫かごが邪魔なのかごそごそし出した。落ち着くまで待っていようと突っ立っていると、急に耳たぶを触られた。 「ひゃぁ!」 「お前なんでこっちにはつけてねーの、これ」 反対側につけたリングピアスをつんつんと突かれる。思わず情けない声を出してしまった。 「あー、えーと…」 まさか「君の誕生日に俺をプレゼントしたんスよ」なんて言えない。口が避けてもこのピュア天使には言えない。片方だけだと所有物みてぇでいいなとベッドの上で男くさくニヤリとしていた色っぽくてかっこいい青峰っちがちょっと懐かしい。 「一個の方がかっこいいでしょ?」 ふざけてそう言い後ろの青峰っちに顔を向けると、悪がきんちょといった笑顔を向けられた。 「俺のがかっこいいっつーの!」 どうしよう、全然否定出来ない。反論しない俺に勝ち誇ったようにぶんぶんと足を揺らす青峰っちが可愛くて思わず笑ってしまった。 「どこ行くっスか?」 「ザリガニ!!とりあえず家帰って、荷物取ってこよーぜ。俺ん家分かる?」 もちろん。何度おじゃましたことか。だけど少々知らないフリをするのが賢明だろう。 「あっちらへんスよね〜?」 「そーそー。りょーたー?」 可愛い青峰っちは、俺の名前を呼んだかと思えば、うなじ付近に顔を押し付けると、なんとそのままガリッと噛みついた。 「ぁっ!」 親しんだ感覚にぞくりと肌が粟立つ。今は服に隠れて見えないけど、その数センチ下には同じような跡が何ヵ所もある。気のせいだと思いたいが、明らかに意志を持ってそのまま血を舐めている青峰っちに悪い予感がした。 「お前気に入った」 だから俺のな! 無邪気に言われたら叱ることも出来なかった。誤魔化そうと沈めたけれど、あの瞬間体に熱が生まれたのも確かで。あーあ、12歳も下なのにこんなに翻弄されている。青峰っちはどこにいっても俺の手綱を離す気はないようだ。 それでもぎゅっと首に巻きつく細い腕が可愛くて、まぁいいかと思ってしまう。俺の全部が青峰っちのものなら、今更跡が一つくらい増えても問題ないっスよね。 飛行機雲が君をつれてきた (りょーた、お弁当作れ!) (やっぱりかわいいっス!) ――――――――――――― アンケートから着想をいただきました!ありがとうございます。 ものすごい自分得なんですが、続き書きたいですw × 20121114 |