大規模侵攻の裏側

※ようするにうちのこ無双話です


『ゲート発生を確認。来るよ』

 通信越しの紗世が冷静に告げる。

「トリガー起動!」

 全員の体が制服から隊服、トリオン体へ換装する。

「紗世さん俺らの担当は?」
『南東部。風間隊が抑えてたけど、人型と交戦中風間さんが緊急脱出。それに伴ってほか隊員も撤退した穴を埋めるよ』
「蒼也が?」

 珍しく伊吹が声を上げた。

『三上さんによると相手は黒トリガーで、少なくとも液体するものらしい。攻撃手では不利なタイプだったみたい』
「じゃあ風間隊が退いたその黒トリガーとやり合うの?」

 緊急事態にも関わらず千莉がやや興奮した声で問う。槍バカと名高い米屋に並ぶほど、戦闘バカな千莉らしい言葉だ。

『そのはずなんだけど、現在南東部に黒トリガーの反応なし。もしかしたら別の地区に移動してる可能性があるね』
『黒トリガーに関しては風間隊から手に入れた情報を頼りに解析してるけど、情報が少なすぎてなかなか進んでない。それといま南東部が一番手薄になってる』

 支部の紗世の隣では碧子も本部から送られてくる位置情報や黒トリガーに関するデータの解析をしている。

『おれらの仕事はトリオン兵の掃討。B級全隊は一箇所に集中して殲滅戦だけど、うちの支部はこのまま南東部を抑えるよ。もう視野に入ってると思うけど、相当な数がいるから覚悟してね』

 紗世の言うとおり、4人の前にはモールモッドをはじめとしたトリオン兵が警戒地区の建物を好き放題荒らしていた。

「うわっちょっと多すぎじゃね!?」
「すごいモールモッドにバムスター、バドに……奥に構えてるのはバンダーかな? トリオン兵これくしょんできるよ、略してトリこれ、なんてね!」
「ちょっ、緋子変なこと言わないでよ。笑っちゃうでしょ!! ぶふっ」
「はっはっはっこりゃあいいや。トリこれ、まさにそうだね!!」

 まるで緊張感のない緋子に千莉が必死に笑いをこらえながら軽く肘で付く。イヤホンから聞こえる笑い声に紗世は相変わらず苦笑い、碧子はお粗末な姉に頭を抱えていた。

「さて、おふざけはこのあたりにして。そろそろ派手に行こうじゃないか。ねえ? みんな」

 最年長の伊吹の雰囲気が一変、それに伴い部隊に緊張が走る。

「いつもどおりね。千莉は好きに遊んでおいで。龍之介は彼女のフォロー。緋子とぼくはバドを中心に距離で攻めるよ。いいね?」
「了解!」

 先陣をきったのはもちろん千莉。襲い来るモールモッドのブレードを最低限の動きで避け、素早く孤月で目を引き裂く。確かな手応えに素早く次の獲物に向かう。一瞬遅れて龍之介があとに続く。1体、2体と手際よく敵を屠っていく千莉の表情は高揚に満ち溢れていた。時折物陰から不意打ちを狙って千莉に敵のブレードが迫り来るが、彼女は見向きもしない。テレポートを使って飛び出た龍之介がすかさずスコーピオンで倒す。

「ちょっ千莉前に出過ぎ!! 俺追いつけねえだろ!!」
「もたもたしてるアンタが悪いんでしょ! 敵は待ってくれないんだから!」

 慣れた千莉はどんどん前線を押し上げていく。距離を置いたところからバンダーが砲撃を放つためにエネルギーを溜める。しかし、いままさに放とうと口を大きく開けたとき伊吹のイーグレットがすかさず仕留める。

「おらおらおらー!!」

一方空では緋子のアステロイドの弾幕が張られていた。多量のトリオンを持つ緋子は命中率よりは数で攻める。飛行能力を失ったバドが地に落ちる。それをまた千莉と龍之介が確実に目を潰していく。
 調子よくトリオン兵を撃破していくが、紗世の管理している画面に新たなトリオン反応が出現した。
それと同時にスコープ越しの伊吹が倒したはずのバンダーの腹から何か動くものを見た。

「『新型出現!!』」

 2人が同時に叫んだ。

 めきめきとバンダーの体内から新型、ラービットが2体出現。

「げえっ噂の新型ァ!?」

 前線にいた龍之介の悲鳴が通信を通して響く。

『気をつけて!! 迂闊に近づけば取り込まれる!!』

 すでに紗世の元に届いている情報ではB級の諏訪、C級の訓練生たちが何人も食われていた。それを聞いた龍之介と千莉は距離を取る。幸いほかのトリオン兵はすでに殲滅した後だった。

「これが噂のデカ物ね!」
「千莉、お前嬉しそうだな……」
「え、そう?」
「顔に出てるよ〜」
「これだから戦闘バカは……」
「紗世、情報を」

 緊張感のない高2トリオを無視して伊吹が紗世と通信を取る。

『いままでのトリオン兵と違って、よりヒト型に近から動きも俊敏で、瞬時に目を守る頭脳を持ち合わせてるから気をつけて。風間隊の菊地原くんによると両腕と頭、背中は硬いから柔いところから削りきるか、一瞬の隙を突いて目を破壊するしか今のところ対策はない模様』
『玉狛の小南先輩が一撃で決めた情報はありますけど、千莉さん間違っても張り合おうとしないでくださいね?』
「わ、わかってるわよ碧子ちゃん!」

 本当にわかってるのかなあと緋子と龍之介は少し怪しそうに彼女を見た。しかし状況がわかっていない千莉ではないので、思考を切り替える。

「龍之介はぼくとチェンジで。緋子と一緒に中距離から千莉を援護して」
「緋子了解です!」
「俺もわかりましたけど、新型伊吹さん一人だけで大丈夫ですか!?」
「大丈夫。応援が来るまで相手するだけだから。紗世こちらに向かってる隊は?」
『……今のところ二宮隊と片桐隊、生駒隊が本部より応援に来てくれてます。時間にしておよそ5分ほどです』
「おっけー。それじゃあ危なくなったら緊急脱出で退避。ほかの隊が来てくれるまで粘るよ」
「はい!」
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