年下の先輩を労わり隊
「迅ー! お誕生日おめでとー!!」
部屋に入るや否や祝いの言葉と共にクラッカーと紙吹雪が散った。
呆気に取られていると、一番近くにいた伊吹さんがなにやら紙で作った花冠を乗せようとしたので少ししゃがんだ。
年下に見えて実はレイジさんと同い年のこの人は背の低さと童顔というコンプレックスなどなかったかのように振る舞う。俗に言う男の娘というやつだ。
「よう迅お前今日誕生日なんだってな?」
「太刀川さん、それに東さんに冬島さんまでいるんですか……」
いったい何のメンツだと言えば、ここが諏訪隊の部屋だと言えばわかるだろう。
肝心の隊長隊員たちは防衛任務を終えてみんなでご飯(おそらく諏訪さんのおごり)に行ってるらしい。おい戸締りどうするんだよ……。
「さあ迅、思う存分触ってもいいんだよ?」
あざとくウインクしながらこちらにぷりっとした可愛らしいお尻を向けてくる。
「じゃあお言葉に甘えて――なんて言うわけないでしょう!?!?」
確かに見た目は完璧女の子でお尻の形大きさも申し分ないけど!!
「男の尻を撫で回す性癖はありません!!」
「なーんだ残念」
顔面偏差値の高いボーダーだが、それに退けを取らないから余計に困る。
「迅、誕生日プレゼントに俺と模擬戦する権利を与えよう」
「いやそれただ太刀川さんがしたいだけでしょ」
これだから戦闘バカは……。
「迅誕生日おめでとう」
「ありがとう東さん」
「これは俺達からのプレゼントな、つっても嫌というほどもらってるだろうけど」
そういって冬島さんが両手で抱えるほど大きな単ボールを5箱まとめて持ってきた。
中身は確認せずともぼんち揚げだ。
「いやいや俺の主食ですから、ありがたく頂戴します」
「ぼんち揚げじゃなくてご飯食べてる?」
「食べてますって」
「レイジに聞くよ?」
「うっ」
レイジさんに直接聞かれるとたぶん答えはよくないものが返ってきそう。
「ちゃんとご飯食べない悪いエリートはこうするよ!!」
するといきなり抱きついたかと思うと、身軽に首に片足を上げ、絡みつくとそのまま卍固め。
「痛い痛い痛い!!!!痛いよ!! 痛いよ伊吹さん!!」
「いいぞー伊吹さんもっとやれー」
「太刀川さんは黙ってて!!」
容赦なく攻めてくるあたりさすが風間さんの同級生だなって思う。
「ちゃんと食べるって約束する?」
「伊吹、どうせなら3食って付けておきなさい」
「食べます食べますちゃんと3食食べますからァ!!」
口約束に終わらせないためにちゃっかり東さんが即興で誓約書を作って拇印まで取らされる徹底っぷり。
「みんなお前が心配なんだよ」
「いや東さんわかってますけど、ここまでやる必要あります?」
「普段のお前の振る舞いが招いた結果だろ?」
「要するに信用されてないってことだよ」
「2人ともヒドイ!! 冬島さん、助けて!!」
「悪いな迅、それに関しては俺は力になれない」
「んんんんんどう足掻いても無理だって俺のサイドエフェクトすら言ってるうううう」