睡魔には勝てない
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「……眠い」

「スキありぃ!!」

「……」

「……マジかよ」

眠いからって油断した。
見事にびしょ濡れになった俺に原因である清春ですら驚きを隠せなかったようだ。

「お、おい…」

「…保健室で寝てくる」

未だに驚いている清春にそう残し、俺は保健室へ向かう。
夜更かししたのが悪かったのだろうか。だが、昨日買った本が面白かったのだから仕方がない。

「誰もいないのか…?」

シン、と静まり返った保健室。
まあ、その方が有り難いのだが。
ヤバい、眠すぎで視界が霞んできた。とにかく寝よう。

俺はベッドに潜り込むとすぐさま夢の世界へと旅立った。




−−−−−


「……葵?」

何かが動く気配がして目が覚める。

今まで寝ていたベッドの中には葵の姿。
いや、正しく言えば僕が寝ていたベッドの中に葵が入って来たのだ。

「……葵」

熟睡しているのか声を掛けても葵が起きる気配はない。

「………」

起こすのも何だかかわいそうで、僕は静かに葵の寝顔を眺める。
長い髪が顔にかかって邪魔そうだったから優しく払えば、くすぐったかったのか葵が身じろぐ。

「ん……?」

「起きた……?」

うっすらと目を開けた葵に声をかければ手が伸びてきて……抱き着かれた。

「……?!」

いきなりの事に驚くが何故か嫌ではなかった。
人間は嫌いなのに、葵の体温は心地よかった。

「なんでだろうね、トゲー」

「トゲ?」

初めから、葵だけは傍に来ても不快じゃなかった。
理由はわからなかったけど、葵は特別。
他のB7も特別だけど、葵はそれ以上。

だから。

「お休み、葵」

そう呟いて葵の隣で眠った。




睡魔には勝てない
(…起きた?)
(なんで瑞希が……?)
(寝てたら葵が入って来た)
(マジか…!)







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