..xx 赤司の災難 xx..
「遥ちゃん、今日大丈夫?」
『うん大丈夫!準備万端だよ〜』
部活終了後、1軍の女子マネージャーである桃井と遥がそう話しているのが聞こえた。
キャイキャイとはしゃぐ姿は今日の疲れをまるで感じさせない。
最近、土曜日の部活後は何かやっているようで、他の者の誘いは断って二人だけで帰宅している。
(……一体何をやっているんだ)
マネージャー同士仲良くやっているのは良い事だ。
だが毎週毎週自分と共に帰宅するのを断られるとは、どうも気に食わない。
赤司は遥の下宿先の合い鍵を取り出した。
鍵は先月試合後に来た際に作らせた。
二人が家に戻ってしばらくした後、赤司は玄関の扉をそっと開けた。
『桃ちゃん、こう?』
「そうそう!いい感じ!」
中からは音楽と声が聞こえてきた。
「左から右へ振って」や『トントンでクルンッ』といったやり取りを繰り返している。
「下僕、桃井。二人して何やって…」
部屋へ繋がる扉を開けると、二人はテレビとゲーム機の前に立っていた。
テレビに写っているのは、最近よくCMで流れるダンスゲーム。
「…………ゲー…ム?」
『……来週、商店街で開催されるダンス大会に参加するので練習してたのですが』
突然現れた赤司だが、合い鍵を作らされ、"人ん家に勝手入らないで下さい"とは今更言えない。
桃ちゃんと大会に参加する事になった目的は優勝商品の商品券3万円分だ。
部費には上限があるので、タオルなどの消耗品を出来るだけ節約し、浮いた分は打ち上げ費用に回したり来年度予算に繰り込みたい。
そこで"帝光バスケ部女子マネ"という名前で参加し、3万円をゲットしようということだ。
桃井があまりにやる気だったので断れず流されていたが、今では当日が楽しみで仕方ない。
赤司に事の説明をすると半ば呆れ顔になった。
「でも二人だけだと…イマイチパンチがないんだよね〜」
桃井は鞄から赤いロングのウィッグを取り出した。
それは赤司の髪色にピッタリ一致している。
いつもなら直帰するのだが、今日はウィッグ店に立ち寄りたいと桃井が言い出した。
「………私が気付いてなかったと?」
赤司が後をついて来ている事に気付いていたようだ。
さすが情報収集に長けているだけある。
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