…暑い。死後の世界にも夏というものはあるらしく、セミも鳴いている。…体調不良になることはまず基本的にないが、じりじりと照り付ける太陽にセミの鳴き声、運動部がランニングをしているかけ声…この上ないくらいに最高の「暑い」と感じる材料だった。
もっとも、長袖のブレザーを着ている時点で可笑しいのかもしれない。暑さで倒れることはなくても、痛覚と同じく感覚は死んでいない。そりゃ暑い。…そりゃ暑いよ!!!!何やっていたんだ俺は!!!!

「音無?こんなところで何して…って何脱いでんだよ!?」
「日向、誤解を招く言い方はやめてくれ。上着を脱いだだけだ、俺は高松ではない」
「お、おう…悪かった。ゆりが次のオペレーションの説明するから本部に来いって怒ってたぞ」
「ああ、サンキュ」

俺はゆっくりと日向の横を通りすぎ、二、三歩歩いたところで日向に問われた。

「…しかしブレザー着てないのも何か新鮮だな」
「そうか?そんなでもないと思うが…ところで日向は暑くないのか?」
「あー…言われれば…ま、三枚も着てるからな」
「言われればって…」

苦笑混じりにそう言えば、不機嫌そうに日向は口を尖らせた。

「別に耐えられない程暑いってわけでもないし」
「でも、せめてその赤いシャツは脱いだらどうだ。中に着てたら流石に暑いだろ」
「暑くない!」
「何で即答なんだよ!意地はんなって…」
「はってねーって!」
「はってるだろ!」


ああ、何どうでもいい喧嘩をしているのだろう。あ、喧嘩って程でもないな。あまりにもくだらなすぎる。

「とりあえず脱いだら涼しいんじゃないかって提案しただけだ!」
「あーそうかよ!自分じゃ絶対脱がん!俺から言わせてもらえばお前のネクタイのが暑苦しいな!」
「なっ…じゃあ意地でも脱がすからな…って何するんだ!」
「暑苦しいネクタイをほどいてやってんだ」
「なっ…ちょ、やめ!」



「あなたたち…遅いと思って見にきたら白昼堂々何やってるの…服乱して…まさかコレだったのね…」

冷たい視線と声のする方に目をやれば、なんともいえない表情をしながら口元に手をあてているゆりの姿があった。

「まてゆりっぺ、これは誤解で…」
「お楽しみ中悪かったわね…それじゃ、お気遣いなく」



取り残された俺たちは、ただ呆然としているだけだった。





100718

すごく…ぐだぐだです…
意地でもシャツを脱ぎたくない日向と見ているだけで暑いと理不尽な音無の話でした

―アンケお礼
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