音無さんに誘われて、祭りにやってきた。本当は人混みがあまり好きではなかった。…なんとなく、好きではなかった。

会場に着いて暫くすると、僕の周りから見知った顔は消えていた。周りからすれば、僕が消えたのだろう。…決して迷子ではない。


(はぐれた、か…)


折角音無さんと沢山居られると楽しみにしていたのに。

周りにいる人々は、祭りに喜び心底楽しそうだ。沢山の出店。胸の内から叩かれるような太鼓の音色。何もかもが陽気で…今の僕にはあまりにも不似合いな景色。
どん、と人にぶつかった。舌打ちをした。相手は、隣の人と笑顔で気にもとめていなかった。


せっせとただ目的地もなく、淡々と歩くだけの作業。
音無さんに勧められて着た浴衣も、今はただ歩きにくいだけだった。


(今は全部が気に入らない)


また、人にぶつかった。


わざとらしく不機嫌な顔をして上を見上げ、思わず驚いたんだ。


「なーにそんな暗い顔してんだよ」

ぶつかったかと思えば、頭を気安く、そして乱暴に撫でてくる男。

…日向。

「…っ。触るな!」
「おっと…いきなり殴りかかるなよな… じゃ、向こうで皆待ってるから」


こいつは馬鹿か。触るなと言った直後に、僕の手をとって歩きだした。

…本当はすぐ振り払おうと思ってた。



…でも、振り払うにはあまりにも惜しくて。


温かい…指先から伝わる体温にひどく安心した。


「…おい貴様」
「貴様って…お前なぁ、そろそろ…」
「僕は上の方が好きなんだ」

そう言って、つなぎかたを直した。
相変わらずの間抜け面で驚いた顔をしながら、言った。


「…手の位置に好き嫌いとかあんのか?」
「察せ、愚民め」
「なっ…ほんっと音無の時と違うよなお前!何度も言うけど!」
「ふん。当たり前だ、音無さんは気高い貴族だぞ」
「ったく…もっと素直になりゃ可愛いのによ。さっきだって泣きそうだったのになー」

「…誰が泣きそうだったって…?」
「…!」
「いいだろう…貴様は金魚だ…すくわれる金魚の気分を思い知るがいい」
「うわあああああすくわないでえええ!!!紙が破れたからって縁ですくうのは反則だあああ…」


わんわんと泣き始める男を背にし、音無さんたちが呼びかけている方へ僕は歩いた。


…僕が寂しくて泣くなんてあり得ないだろ。全くばかなやつだ。






100725

死んだ世界とか転生後とかそういう深いことは考えなくていいと思います笑
補足すると、直井が繋ぎ方を変えたのは私が手を繋ぐ時、下の方が好きだからです。つまりただの趣味です。
わかりませんか…!この気持ち!両隣の人と繋いだりしても、大体私は両手とも下に繋ぎます。だって上なんか気持ち悪い…では何故直井が上かというとただのセクハラです。上が好きなんだそうですよ^^←

会話が多くて文章が適当なのは元々めもに投稿するSSだったからと言い訳させてください笑


この二人可愛い^^ツンな直井と呆れつつ優しい日向^^寂しくて泣かないけど安心して少し涙目な直井^^


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