面白い友人がいる。
明るくて、頭が良くて、真面目で、優しくて、面白い。
そんな友人が大好きだ。
クラスの仲間とも仲良くやっている。
頭は悪いけど、不自由のない生活をしていてそれに満足している。
…だけど。
「どうして、こんなに退屈なの?」
…………。目覚まし時計の音がする。あ、なんだ、夢か。退屈なわけないもんね。あんなに楽しい仲間も沢山いるし。
なのに目に映るものは全て白黒(モノクロ)で。
朝食のトーストも、スクランブルエッグも白黒だった。
「ちょっとユキ、顔色わるいよ」
「ホントだ。保健室いった方がいいんじゃない?」
「俺が連れていこうか」
「何言ってんのよー大丈夫だ…よ…」
世界暗転。貧血気味なのかな。沢山、眠ったんだけどなー…もしかしたら熱?やだなぁ、こんな時期に熱なんて。
目を覚ますと薬品の匂いが鼻をかすめた。白い天井。
(…あ、保健室だ)
誰かに運ばせてしまったのか、申し訳ない。
そして体を起こそうとしたときに異変に気付く。手のひらから私じゃない他の体温を感じた。
「トオル…?」
私の手を握って寝ているのはトオルだった。
すやすやと寝息をたてながら動く紫の髪がとても可愛らしかった。
「ん…吉川、目ぇ覚めたのか…なんか今日に限って保健室先生いないからよーまぁでも授業サボれたしラッキーか」
そう笑って、今度は真剣な顔つきで私を見据えた。
「何で調子悪いって言わなかったんだよ。本当に吉川はバカだな」
「なっ…バカにバカって言われたくないわよ!バカトオル!」
「なんだ、元気じゃん」
「…」
それ、反則だよね。なんでそんな笑いかたするの?
「…だって、全部色がないから」
「…?」
「私って、可笑しい。明日は晴れなのかなとか、今日も晴れてるのにそんな未来のこと考えて逃げてるの。幸せなのに、不幸な思考にばかり走って…私、やっぱり可笑しいね」
「別にいいんじゃね?昨日よりも今日、もっと綺麗に晴れてたら俺は嬉しいし。今日より明日がもっと晴れてたら、また嬉しい。…皆、同じこと思って生きてるよ。だから吉川は可笑しくなんかない」
「トオル…空って綺麗だね。すごく、青いよ」
「白黒なんかじゃねーだろ」
「うん」
保健室の窓から見た空は何重にも青くて、青い絵の具で塗った空にまた青い絵の具で塗ったみたいな。眩しくて涙が溢れた。
私の世界も鮮やかな青になりますように。
(大丈夫、私には紫色のペンキ屋がいるから)
「おはよう」
100620
電波な透由が好きなんだ…好きなんだ!
ちょっとだけ解説を加えると、楽しい日々…というか楽しすぎる日々にユキは明日、またこんな風に笑っているのだろうか。もしかしたら、この幸せが途切れるんじゃないかと不安になります。
透はそんなユキに「俺が今日よりも明日もっと楽しくしてやるから」との意味でよくわからんクサイ台詞を言いました。
白黒の夢から覚めたユキにおはようと笑いかけたのでしたー