いつの間にか出来た日常。俺と隣にいる日常の後に出来た日常。そんな日常が、俺を悩ませていた。

「音無さんっ!あのですね、この前言ってた魚の話なんですが…」


あぁ、そんな風に笑うなって。
直井は、お前のことを好きだっていうのに。笑いかけたりなんかしたら…


「あら、日向くん。何やってるの」
「おー…ゆりっぺか…」
「何よその気の抜けた返事。あたしが来たからテンション下がってるの?」
「あぁ…」
「なっ…撃つわよ?」
「あぁ…」

一瞬ゆりは銃を構えかけたが、俺があまりにも上の空だから、面白くないわねなんて言って銃をしまった。撃たれたら痛いが、今は撃たれても構わないくらいどうでもよかった。投げやりな気分だった。どうせ、死なないしな。

「ふうん…此所から音無くんと直井くんを見てたわけね。よくもまあ暗い物陰からこそこそと…」


ゆりはあきれた。とでも言いたげにため息をつき、両手を上げて首を横に振った。
あぁ呆れたなら勝手に呆れてくれ。もう今は、最高に鬱ってやつなんだ。


「音無くんが構ってくれなくて寂しい?」
「なっ…」

思わず振り返ると、「図星ね」とにやけた顔のゆりが立っていた。

「…別にそんなんじゃ」
「でも初めて反応したよね」
「…」
「仕方ないわねぇ。正直に、構ってー!って言えばいいじゃない」
「簡単に言うなよな…それができたらこんなに落ち込んでないぜ…」
「それもそうよね…」

ああそうだ。俺が素直じゃないから、こんなもやもやしているのであり、直井や音無は悪くない。わかっているのに、自分から音無に向かっていける直井が羨ましくて憎たらしくてたまらなかった。

(直井が戦線に入るまでは、俺だって…)


そんな自分と葛藤していると、ゆりはあ、そうだと何か閃いたようにこっちを見て口を開いた。


「少し待ってて」


そしてどこかへ駆けていった。



「何だったんだ…?」

取り残された自分は、ただ呆然と空を仰いでいた。
雲が穏やかに流れていて、絵の具で塗り潰したような青い空。もやもやしている自分には、空は眩しすぎるくらいだった。


「あれ、日向」


気持ち良い風が頬を撫で、眠りの世界に入ろうとしていた時、聞き心地の良い声が自分の名を呼んだ。


「お…となし…?何でここに?」
「いや、ゆりが此所に行けって言ったからさ」


そう言うと、自分の隣に腰を下ろした。


「あいつ…直井はどうしたんだ?」
「ああ、ゆりに連れてかれた。生徒会の権限で学校をうんたらかんたら言いながら…」
「そっか…」


親指をたてこちらに向かって笑みを浮かべるゆりを想像すると、思わず笑みがこぼれた。

「で、何かあったのか?」

まじまじと顔を見つめてくるもんだから、思わず視線を逸らしてしまった。その行動がやはり、気になったのだろう。念を押すように、首を傾げた。


「その…あの…えっと…だな…」
「?」
「あ…えっと…なんでも…ない…」
「何でもないわけないだろ?…っていうかお前顔赤くないか、熱…あぁ、この世界ではないんだっけ」

やっぱり慣れねーな、なんて笑いながら頭をかく。そんな仕草が、鼓動の早さを高めているようだった。


「あ…俺、直井が羨ましい。直井みたく、その…」


そばにおいてほしい。



その言葉を言う前に、俺は音無の腕の中にいた。とても温かくて、優しかった。

「ばーか。俺の隣はいつもお前だろうが。直井と日向は、違うだろ」
「うっ…」

恥ずかしさはピークを迎え、もがきだした。


「わっわかったから離してくれよ…」


しかしそう言った直後には、音無の唇は自分のものに重なっていた。



ごめん、やっぱりさっきの言葉、離すなにしてくれ。






100613

若干確信犯な音無さんとちょっと日向さんが頑張ったお話。
リクエストの音日で日向が直井に嫉妬でした!
いや、ゆりっぺが一番頑張ったよなコレ…。
日向がすごく…乙女です…いや、乙女いいよね乙女!
リクエストくれた方本当にありがとうございました!


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