※そこまでグロじゃないけどちょっと痛い描写あり




「臨也さんは自分が特別だと思っているんですか?」
「は?」


竜ヶ峰帝人が家を訪ねてきた。何を企んでいるのかと思えば、あまりにも唐突すぎる疑問。その疑問には流石にこちらも疑問しか抱けないよ。

「…もう少し的を射た聞き方をしてくれるかなぁ」


くるっと椅子を回転させて振り返ると、思わず息を呑む程に恐ろしい表情をしている帝人くんの姿があった。ただ立ち尽くし、ただ表情を変えない無表情。あれ、彼ってこんな表情する人だったっけ?

「すみません。そうですね…臨也さんは僕にとって非日常的存在だ。臨也さん自身は自分をどう思っているのかなって」

まるで人畜無害。自然すぎる、無邪気な笑顔は今の空気とはかけ離れていて…それこそ不自然な空気だった。

「さぁ…特別かどうかは考えたことがないな。変わってるなとは自覚してるよ。あぁ、でも賢いとは思ったことはないかも」
馬鹿だとも思ったことはないけどね、
そう笑えば彼は満足げに口元を緩ませる。綺麗に弧を描いたそれは、ぽつりぽつりと言葉を溢し始めた。


「でも、臨也さんは、…臨也さんも…人間だ」
「うん?」

俯いているから表情が確認出来ない。声は震えている。…泣きそう?否、そんなはずはない…。おかしいな、彼という存在が全くわからない。


「だから刺されば痛いし、血だって流れる。沢山流れれば死ぬんですよね」
「…はぁ、」

何が?何が刺さるって?本当に無邪気で人懐っこそうな笑みを浮かべては、その笑顔に似つかわしくない言葉をすらすらと重ねる。


「…で、何が刺さるって…っうぁ!」


突然の事に思わず声をあげてしまう。急いで彼の顔を見ると、さっきよりも断然に近くて、それでも尚人畜無害な笑顔。あぁ、怖い。


どくどくと、左手が脈をうっている。つぅっと赤い熱い液体が皮膚の上を滑る。その頂上には―…ボールペンが刺さっていた。

こんなもの。ナイフに刺されたり、銃で撃たれたのに比べれば可愛いものだ。しかし、普段は文字を書いたりするのに使うはずの物が己の手に綺麗に突き刺さっている。そのショックは相当だ。


「ちょっと…どういうつもりなの」
「痛いですか?」
「当たり前でしょう」


そう答えると、非常に残念そうな顔でそうですか、と言った。ペンを抜くのかと思えばぐりぐりと回転を加えたり強弱をつけたり。
あぁ、目の前が赤と黒でチカチカする。


「…っは、ねえ、痛いんだけど」
「…臨也さん、臨也さん、臨也さん…」
「帝人くん…俺、ショック死しちゃうよ?」
「…ショックなんて受けてないくせに」
「あは、じゃあなんだろう、出血多量かな?」
「…全然血なんて出てませんけど」
「いや、少し血管かすったからね、申し訳程度だけど、ほら出てる」


「臨也さんは、これじゃ死にません」


そう言って帝人くんはすっと距離を置いた。何やら真剣な目付きで見てくるので、こちらも目を逸らせない。
都会のマンションのリビングでは男二人が見つめあって片方には左手にペンが突き刺さっている。なんともシュールな光景だなと想像して心の中で笑う。


「帝人くんはさぁ、何がしたいのかな」


俺を殺したいの?


そう挑発的に笑い立ち上がる。すると、身長差は圧倒的に有利になる。ほんの一瞬に過ぎなかったが見下していると、彼は左手のペンに手をかけ思いっきり引き抜いた。ずるりと嫌な感触がする。ペン先だけじゃなくて、結構いらないところまで突き刺さってたんじゃないのこれ。


「違います、でも」


先ほどまで手に刺さっていたペンをすうっと心臓に向けてくる。カチリと音がした。ペン先は、出ていない。先の出ていないペンを左胸に宛てると、俺を見上げて言った。



「ここに刺して心臓を貫けば、死にますよね」


まぁ、流石に無理な話なんですけどと彼は笑う。



「…うん」


短く返事をすると、キスされた。


…かたんと、ペンが下に落ちる音がした。






100823

はいはい電波電波。
こんな帝臨が好きなんだけどどうだろう。同じ人間だとわかっていても臨也にはどこか特別でいてほしい帝人。キスで下から攻められるって萌えるよな、うん萌えるよな。
本当はねちっこくキスシーン書きたかったけど恥ずかしいんで許してください。


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