※flatパロ
全然パロになってないけど一応パロなので苦手な人はお気をつけ下さい。




「えっ臨也、今日だめなの」

大袈裟なアクションをつけて、岸谷新羅は言った。

「俺だって、行きたかったさ。スイーツフェア」


スイーツフェア。ああ、なんて甘美な響き。普段、何にもない退屈な日々の中でも甘いものさえあれば世界は変わる。人間も好きだけど、甘いものはもっと好きだ。因みに、今日の場合は駅前のファミレスでスイーツが半額になるといった祭りだった。
だが、行くことが許されない。

「…臨也が行かないって言うなんて珍しいな。悪いもんでも食ったか?」
「ドタチン。『行かない』じゃなくて、俺の場合は『行けない』だ」
「何があっても甘いもの最優先の臨也が行けない用事?またお母さんに何か頼まれたの」

「まあ…ね」

「ふむ…臨也が絶対に破れない約束、というと…あれかな。ほら、例のいとこ。名前、何て言ったかな


たしか、



「シズちゃん…いらっしゃい」

その声を聞いて、シズちゃんと呼ばれた小さな男の子は静かにコクリと頷いた。

家について間もなく、シズちゃんこと従兄弟の平和島静雄がやってきた。
正直、子どもは苦手…というか、どう接して良いかわからない。考えようともあまりしなかった。学校でも同じで、人付き合いについては正に『適当』だった。
が、どういうわけかシズちゃんは俺になついたらしく(全くもってわからない。優しくした覚えもないし、まともに遊んでもいない。子どもの興味を惹くような特技があるわけでもない。ただ、お菓子を作るのは好きだけど)たまたまシズちゃんの両親が忙しかった日以外にもよくうちに足を運ぶようになった。

「じゃあ臨也、お母さんたち出かけるからよろしくね」
「…はいはい」

そうやって自分たちばかり出かけて。俺だって出かけたいのに。主に駅前のファミレスに。…心の内を読まれたのか読まれていないか、だるさを残した曖昧な返事へ対しての怒りかはわからないが、キッと睨まれたのでこれからはあまり不満などは言わないようにしようと思う。たとえ心の中でも(我ながらなんて理不尽)おばさんのあんな顔を見たらシズちゃんは深いトラウマを負うだろうな。

パタンと閉まる扉と、玄関に残された俺とシズちゃん。
さて、どうしたものか。


「…えーと…どうしようか」
「…」

声にしたものの、返事はなくじっと色素の薄い大きな瞳が無言で見つめてくるだけ。
…どうすりゃいいんだ、まったく。


「…」


「…いざや、おれひとりであそぶからだいじょぶ」



あ、そう?それは助かるなぁ!



何てことは間違っても言えるわけない!

「…そう。シズちゃんが、それでいいならいいけど…シズちゃんは、いいの?」

するとシズちゃんは少し迷ったように間を置いて、静かに頷いた。それでおしまい。…というわけにはいかなかった。何故なら、シズちゃんの表情である。鈍い俺ですら気が付くほどに、眉間に皺が寄り唇が震えている。いかにも「寂しい」というメッセージそのものだった。


「…俺はシズちゃんと一緒にいたいなあ…」

ちらりと目をやると、嬉しそうに輝く顔が。眩しい!俺には眩しすぎる!


「おれもっ…」

頬をピンクにしてこうも微笑まれると、なんだかほっとするのだった。


「そう。じゃ、お菓子でも作ろう」
「おれ、てつだう」

「ありがとう、助かるよ…シズちゃんは何が好き?」
「プリン」
「じゃあ、プリン作ろっか」


コクリと深く頷いたシズちゃんと俺の間には、暖かく心地よい空気が流れていた。






101210

ほのぼの!になったかな…。
遠子との「flatパロいいなぁ」という会話から生まれたこの話。
パロというか。そもそも、臨也と平介とではかなり性格が違うから、甘党臨也と子静みたくなった。まぁ、いいか。子静は正義…!
因みに静雄は秘めたる力は持ってるけど、まだ覚醒していない時期で、幼稚園くらいの頃は名通り大人しかったという捏造裏設定が。
書いてて楽しかった!
しかしこれは臨静なのかなぁ。臨也+静雄くらいが正しいかもしれない。


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