あの日から、僕は音無さんについていこうと思った。
そして、幸せにしたいという思いも同時に生まれた。


憧れとは別の、そう、この感情は初めてだが妙にしっくりくる。



恋、だ。


「音無さん、おはようございます!」
「お前…なんでここにいるんだよ? 俺の部屋だぞ?」
「起こしに来ました!ほら…カーテンも開けて…今日も良い天気ですよ音無さん」
「え…あ、ああ。…眩しいくらいにな…」


直井がカーテンを開けたことにより、朝の日の光が直接目に入り、少しだけ眉を寄せる音無。


勿論直井は窓から見える景色を見ているので気づいていないが。


とても清々しくて、なんだか嬉しい気分だった。


「さ、音無さん…朝食食べにいきましょうよ」
「…ああ。わざわざありがとな…」


そう言うと、音無さんは僕をちらりと見た。何か言いたげな表情だった。

「…その…着替えるから…」
「…!何なら僕がお手伝いしますが…ぶっ」
「いいからお前は先に行ってろ…」


音無さんが投げた枕によって言葉は遮られてしまったが、通じたようだ。そして、どうやら否定されたようだ。


「…わかりました、じゃあ寮の玄関で待ってます」


また一瞬顔を歪め、それでも仕方ないと言いたげに笑いながら言った。


「あぁ、悪いな」




…行き過ぎたお世話だってことは自覚してる。
でも、それでも、音無さんの為になれば、助けになりたい。そんな思いは溢れだして止まらなかった。


「待たせたな」
「いえ、待たせたなんて!さ、行きましょう音無さん」
「お、音無ー!なんだ、今から食堂行くのか?一緒に行こうぜ…ってお前もいんのかよ!」
「貴様…僕は神だぞ。洗濯ばさみ以下の愚民にお前呼ばわりされる筋合いはない…あ、勿論音無さんは別ですが」
「何ぃー!?」
「ほら日向、直井、早く行くぞ」
「あっ待ってください音無さん!」
「おい音無待てよー!走るなんて卑怯だぞー!」


音無さんに出会う前では考えられなかったこの幸せな風景。
笑いながら走るなんて初めてだ。


だから僕は音無さんにとても感謝しているんだ。



「お前、そんなに楽しそうに笑うんだな」
「…音無さんの、お陰ですから…」
「…そうか」


ふわり、優しい風が吹いた。


そういえば、青髪の男に聞かれたことがある。






「なぁ。1つ聞いていいか」
「貴様に答えるような言葉はない」
「何だとー!…お前っていっつも音無に尽くしてるけど…恩返しのつもり…なのか?」
「あぁそれは誤解だ。まぁ、愚民には理解出来なくて当然か…いいだろう、教えてやる」



「っ…て…」

目の前の男のシャツを引っ張り、僕の高さに耳を合わせてから、言ってやった。




「片思いしているからですよ、センパイ」
「〜…っそういうのは本人に言ってやれよな…」




…ならば、今がその時だろう。


「音無さん、好きです」
「な、何だよ突然…!日向もいるのに…」
「…果たして俺はここにいていいのか?」
「僕は、幸せだ」
「…?」


何故なら、貴方に片思いしているからです


(お、おお俺はここにいてよかったのか…?)
(完全に無視されてるな、日向)






100630

とりあえずプロローグ的な。
色々雑ではありますが、ほのぼの時に切ない直井の日常をどうぞ。
音直音を目指してます!
それにしても何か、空回りしているなぁ直井。そんな彼が大好きです。







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