斎藤先輩とわたし | ナノ
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06:All I want for Christmas is you
 the 2nd volume R-18


その夜のお風呂はいつにも増してはじめさんのペースで、私は何もかも彼の望むままに翻弄された。
手で口を覆い唇を噛み締めてさんざん戯れ合って、真冬だからと幾度も追い焚きをしたせいで逆に湯あたりしそうになった。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出せば、先に寝室に行ったはじめさんの低い声が聞こえてくる。

「……なまえ、」
「待って、……今」

この夜もお風呂だけで終わりにしてくれるような彼ではなかった。
そのあたりはいつもと同じことだからわかってる。彼の体力と言うか、そういうところはよくわかってはいるんだけど。
でもさすがに何でもお願いを聞くなんて、無謀なことを簡単に言うもんじゃないと少し思った。だってこれはなかなかハード。
だけど寝室に入れば彼の様子がいつもと微妙に違う気がした。
この部屋に一組だけ置いていた、部屋着のロングTシャツとスウェットを身に着けたはじめさん。ベッドに腰掛けた彼の目元が何か少し赤らんでいるように見える。
こういうレア顔は滅多に見られないと言うのに本日なんとこれで二度目だ。

「なまえ、もう一つ頼みがある」
「はい?」
「クローゼットを開けても、その、いいだろうか」
「いいけど、どうしたの」

彼にしては珍しく少し言い淀んで、それに随分変わったことを言うなと思いながら彼の動きを見ていた。そうして目の前に現れた、彼の手にある真っ赤なものに私は大きく仰け反ることになる。
それは。
それは昨日千鶴ちゃんが勧めてきた、まさにそれなのだ。
ものすごいミニスカートのサンタコスの衣装。クラクラ来そうな程煽情的なドレス。それ、その裾の長さ、スカートの意味あるのかな。
手にしたはじめさんはどこかばつが悪そうに私を見上げる。これもまた超レア画像だ。撮影したい。
ってそれどころじゃない。そんなの着たら胸なんかほとんど露わじゃない。そんなに自慢できるほど豊満なもの、私持ってないです、知ってるくせに。

「だ、誰が着るの、」
「あんただ」
「へ、へ……っ」
「変態で悪いか」
「え、私、それ言ってない」

平助くんと言おうとしただけなのに。
この時急にピンときたのだ。はじめさんはこんなものをわざわざ買いに行ったりできる人じゃない。何故なら彼はムッツリなんだから。
これは平助君の入れ知恵だ。きっとそうだ。だから千鶴ちゃんも一緒になってあんな事を言ってたんだ。
昨日「サンタコスでリボンでもかけてなまえさんをプレゼント」とか言われた事を思い出す。あの二人ったらカップルになったと思ったらあっという間に急接近しちゃったんだ。
その上こんな大胆な贈り物をはじめさんにするなんて。





All I want for Christmas is you
欲しいのはあなただけ
―the first volume





彼がサンタコスを手に入れる経緯を話してくれたことでそれはすぐに証明された。
続けて語られたこの数日の理由、どうして私によそよそしくしたのか、避けたような態度を取ったのか。
仕事が立て込んでいたせいもあった、と口を濁してから続いて彼が言いにくそうに口にした事実は、私を拍子抜けさせるのに十分過ぎた。

「そんな、鍵使って入ったからって、私怒りませんよ。はじめさんの部屋に私だって勝手に入ることあるもの」
「そうか」

そんなことで別れ話まで想像して怯えた私って、一体。だけど私の様子にホッとしたのか、彼の方は自信を取り戻したように見える。ゆっくりとまた頬に薄い笑みが上る。

「話を戻すが、あんたは今日一日俺の言うことを何でも聞くと言ったな」
「そ、それは言いましたけど……、」
「この頼みは聞いてもらえぬのか?」
「わ、わかりました。わかりましたから」

深い藍色にじっと見つめられた私はお手上げだった。
ここで着替えればいいという言葉だけは頷けないので、隣の部屋でモソモソとサンタコスを身につけてはじめさんの前に立つ。私の姿を捉えた彼は瞬間目を瞠った。そして眩しげに藍の瞳を細める。
視線が全身をそれこそ舐めるように、足元から這い上ってはまた足の先まで戻っていく。
無言の凝視に耐え切れず「ど、どうですか」と小さく聞けば腕を引かれた。
身体を裏返されて今度は背中から見つめる視線が痛くてそして恥ずかしくて、震えそうな私の身体のラインを両手が撫で下ろすのに耐えていた。
ふいに彼の指先がぴらりとスカートの裾を捲る。

「ちょ、ちょっと……、」

小学生か!
我に返りかけた私には彼が内心物凄く浮き足立っていたなんて全然わからなかった。
言葉を発しないままの唇が私の大きく開いた背中に触れた。「ひゃ、」とへんな声が出れば身体ごと彼の膝に載せ挙げられ向き合わされ、何とかそこに生まれていた胸の谷間にも唇が触れてくる。

「これほどに煽情的なサンタクロースは見たことが無い」

熱い溜息混じりに囁かれる言葉に、私の身体の深部がつきんと疼く。見下ろせば揺れる藍色がまるで哀願するように見つめていた。
こっちの科白だよそれは。本当に今までに見たことが無いほど、あなたの方こそ。
どうしてそんなに苦しげな切ない目をするの?
至近距離で見上げる瞳を見つめ返せば、否応なしに私の内奥も反応を始める。

「よく似合っている」
「はじめさ……、」

近づく藍の瞳が濡れた様に光り思わず目を閉じれば、柔らかく塞がれた。擽るような舌はすぐに奥深くまで届いて、やがて息が上がるほどの激しい口づけに変わって眩暈が来そう。

「あんたは本当に、俺を好きか」
「好きです、そんなの決まってる」
「ならば、もうよそ見をしないで欲しい」

よそ見なんて。そんなのしないと答えたかった私の唇に触れる彼のそれはまた少しだけ震えて、いつもの彼とはやっぱり違って見えた。吸い付くように私の顎先を掠め喉元へと落ちていく。

「何処へも行くな」




・・・The rest is omitted by reason of age limit 
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06:All I want for Christmas is you
 the 2nd volume R-18

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