壱 「修兵」 「…………」 「修兵ってば」 「………………」 だからごめんって何回も謝ってるでしょーっ!!! 今日は修兵の誕生日だった…と言うか、まだ日付は変わってないし、まだ!修兵の誕生日だ。 朝起きて、おめでとうと言うのを忘れた。 ほんのちょっとだけ寝坊して慌ててしまったのが悪かったんだろう、ホントに、すっかり忘れてしまっていた。 思い出したのは、朝から出舎だった修兵を見送った後のことで…… 伝令神機に掛けるのもどうだろうと思ったから、帰ったら直ぐに言おうと思ってたのに……。 「だからね、昨夜まではちゃんと憶えてたの。朝起きて忘れないように、伝令神機のアラームにも修兵の誕生日って……」 「お前はさ、伝令神機に教えて貰わねぇと、俺の誕生日も忘れんのか」 「いや、そう言う意味じゃなくて……」 「最初の結婚記念日だって、プレゼント持って帰った俺に、『今日だった?』とか言いやがったよな」 ……ヤバい。 あれを持ち出されると痛い……。 絶対、愛が足りねぇとか言い始めるに違いない。 どうも私は、記念日とやらに疎い、と言うか、どうでも良いらしい……。 でもでも、修兵の誕生日はちゃんと憶えてるし、今日だって前々から準備をして、プレゼントだって用意してたし。 こんなことしてたら、本当に修兵の誕生日が終わってしまう。 『偶にはさー、紗也から誘ってあげたら?檜佐木副隊長、絶対に喜ぶよー』 …………無理。 一瞬、友人達の言葉が脳裏を過ったけれど、それは無理っ!!! そんなこと言ったら多分死ねる。恥ずかしくて憤死する…… けど…… 「………修兵?」 「………………」 あああ、もうっ!!! 「修兵、その…ね。えっと……」 「…………」 「だから……、早く機嫌直して。それで、その……」 抱いて――…? 今、絶対に私は、全身あり得ないくらいに真っ赤だろう。 私がこんなことを絶対に言わないって修兵だって解ってる。 解ってるから、修兵だって絶句している……。 恥ずかしい。 もう嫌だ。 もう――… 「何か、言ってよ……」 「…………お前、ホント狡ぃ……」 もうちょっと怒ってるつもりだったのに――… 不機嫌そうにそう言った修兵は、言葉ほどにはもう怒っていなくて。 涙目になってる私を抱き上げて寝室へと運んで行った。 やっぱり、言うんじゃなかった――… 私が後悔するのは、その後直ぐのこと―――― |