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・ファンタジーお題C
・彼が小さく・未来の彼シリーズ完結
・小学生パロディ番外編







ふと閉じていた目を開いて、眼前に広がった光景に刹那、酷く安堵した。

「ただいま、シズちゃん」

言うと、目の前で顔を付き合わせていたシズちゃんはびっくりしたように俺から身体を遠ざけた。顔なんか近付けて何してたんだ、とは思ったけど口にしない。
過去のシズちゃんとのさよならは、特に言葉も無いままになってしまった。何せ突然だったから。可愛らしいシズちゃんと過ごす時間が終わってしまったのは名残惜しいけど、ここに帰ってきて一番に覚えた感情は、やはり安堵だった。

「べっ別にいかがわしいことはしてねえぞ。」
「そんなこと、誰も聞いてないけど。」
「ちっせえ手前が来てたんだけどよ、寝ちまったから毛布掛けてただけだ。」

「だから聞いてないってば、」とにやつきながら言った後、座っていたソファの下を一瞥した。落ちていた毛布は、確かにシズちゃんの言うことが真実であることを物語っている。まあ、相手は俺だから何も思わないけどね。
ひとしきり普段通りの会話をすると、俺たちの間に沈黙が訪れた。真正面に相対したそのままの形で。その沈黙の中で俺は、帰ったら言おうと決めていた言葉を思い出した。でもいざ口を開こうとしても、上手く行かなかった。いつも何か言うのは自分からでも、ここ最近素直に何かを言ったことは無い。子どもの頃は所構わず告げていた愛の言葉も、今ではそれに羞恥を伴うようになった。そしてその分、シズちゃんが俺に好きと言ってくれるようになった。

「なあ、臨也」

だからこんな時はいつも、シズちゃんが俺の腕を引っ張ってくれるばかり。

「ごめんな、毎年覚えてなくて。」

俺が貰う、ばっかり。

「シズちゃん、ごめんね」

だから今度は俺がシズちゃんに伝える番だ。

「シズちゃん、俺過去に戻って思ったんだ。」
「いざや、?」
「俺、シズちゃんに甘えてばっかりだった。記念日のことも、どんな我が儘も、シズちゃんなら許してくれるって思ってた。不機嫌に見せたらシズちゃんはいつも優しくしてくれるからって、甘えてたんだ。なのに俺は、シズちゃんに何もあげられてなかった。何も返せてなかった。シズちゃん、ごめんね。」
「・・・・・・」
「それと、ありがとう。ずっと一緒に居てくれて、ありがとう。」

言い終わるとシズちゃんは、無言で俺に腕を伸ばし、抱き締めた。恥ずかしいのに嬉しくて、あったかくてどきどきして、とてつもない幸せを覚えた。ぎゅっと強く抱かれて、俺も腕を回し返す。

「別に、何も貰ってねえだなんて思ってねえよ。」
「シズちゃん・・・?」
「俺は臨也が居てくれるだけで幸せだ。臨也が俺を好きだと言って、頼ってくれるならそれだけでいいんだ。だから、謝らなくていい。・・・謝らなくちゃいけないのは、俺の方だしな。」

シズちゃんは、すんと息を吸い込んだ。俺は幸せ過ぎて死んでしまいそうで、頬にはほろほろと涙が伝いはじめていた。

「ごめんな、臨也。毎年覚えていられなくて。」
「・・・っ」
「どうでもいいとか、思ってる訳じゃねえんだ。あの日を忘れたことなんて一度もねえ。でも、毎年それを覚えていてくれた手前を、俺は毎年傷付けてた。ずっと大事にしていてくれたのに、俺がそれを台なしにしちまってた。ごめんな、臨也。」

シズちゃんの声は、震えていた。俺はシズちゃんもシズちゃんで色々考えてくれたのかなって思ったら嬉しくて、思わず回した腕に力が篭った。

「―いいんだよ。もういい。忘れてるなら、俺が毎年思い出させてあげるから、いい。」
「臨也・・・」
「俺、シズちゃんが好きだ。死ぬほど好き。」

言ってから顔を合わせると、シズちゃんは呆けてから、ふっと笑った。そしてちゅっと静かに、唇を合わせられる。



「臨也、愛してる。来年も再来年も、いつまでだってずっと、」







一緒にいよう
(今に負けないくらいに)
(来年の俺たちは幸せなはず)




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これにて小学生パロシリーズ完結です。
らぶらぶべたべた過ぎて何だか二人とも大変なことになっちゃいましたね。すみません←

次は入れ替わっちゃう話ですね!
今度は原作よりの二人で挑戦してみるつもりですのでお楽しみに!
ここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。

拍手ありがとうございました!!
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