09.ヒューズ家
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「え?リゼンブールの幼なじみが来る?」
エドはそっけなく頷いた。
「オレはしばらく動けねーからな。出張整備ってやつだ」
「ふうん。こき使うのね」
「し、仕方ねーだろ」
リゼンブールの幼なじみ、機械鎧整備士のウィンリィ・ロックベル嬢の話は聞いていた。
スカーに右腕を破壊された時も彼女には散々無理をさせたらしい。
極力自分たちの力で物事を片づけようとする彼らがそこまで頼るのだ、よほど信頼している間柄なのだろう。
「会うのは初めてね。楽しみだわ」
「あいつも、お前の話したら会いたいって言ってたぞ」
「それは光栄だわ」
シャオリーは合掌した。
半月前に彼らが帰郷した際、共について行くか国立中央図書館に行くかの二択で後者を選んだシャオリーだったが、エドが信頼するだけの技術を有する機械鎧技師には大いに興味があった。
いろいろ話を聞いてみたいものだわ。
それからしばらくして、病室の扉が開いた。ロス少尉、ブロッシュ軍曹、アームストロング少佐が入ってくる。
ロス少尉とブロッシュ軍曹は引き続きエドとアルの護衛であるから、彼らのいるこの病院に寝泊まりしていた。
アームストロング少佐は二人の上司ということもあり、ちょくちょく病室に顔を見せている。
今日は客人を伴っての登場だ。
客人とは、もちろんウィンリィ嬢のことだ。
アームストロング少佐の後に続いて彼女は病室に入ってきた。
白い肌にぱっちりした青い目、頬には朱が差している。
金色のポニーテールが大きく揺れた。
「そんな!入院してるのは聞いたけど、こんな大怪我だなんて!」
ウィンリィは愛嬌のある瞳を大きく見開いて叫んだ。
怒っているような口調ではあったが、心配しているのは明らかだった。
エドは気まずそうに視線を逸らす。
「たいしたことねーよ、こんなの。すぐ治るケガだ」
エドは答えたが、ウィンリィは俯いて黙りこんでしまった。
エドはおずおずと顔色を窺う。
「なんだよ…」
「…機械鎧が壊れたせいでケガしたのかな…」
ウィンリィはポツリと零した。
「あたしがきちんと整備しなかったから……」
そのまま口ごもってしまったウィンリィを見て、全員がエドに生ぬるい視線を送った。
エドは大慌てで否定する。
焦りながらもどこか嬉しそうなエドに、シャオリーは鼻を鳴らした。
どうせ「かわいいやつだな」とでも思っているのだろう。
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