03.錬金術師の苦悩
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エド・アル・シャオリーの三人は、毎日のようにタッカー家へ通った。
初日の帰りの馬車の中で、ニーナとシャオリーのやり取りを聞かされていたエドとアルは、迎えが来るまでの小一時間程度、ニーナと遊ぶ時間を設けるようになっていた。
今日も、あと三十分もすれば、二人が玄関から飛び出してくるだろう。
すっかり打ち解けたシャオリーとニーナは、まるで仲の良い姉妹のように毎日じゃれ合っている。
事実、シャオリーは今や、ニーナを実の妹のように感じていた。
妹がいたらきっとこんな感じなんだろうな。
シャオリーはニーナを見て微笑む。
いや、実際、シャオリーには妹が大勢いるのだが、彼女たちは言ってしまえば他人よりも遠い存在である。
環境が特殊すぎたのだ。
「お姉ちゃんたちが来てから毎日すごく楽しい!このままずーっと、うちに来てくれればいいのに」
「ニーナがそういうならずーっと来るわよ!」
「ホント!?」
「ホント」
二人はえへへと笑い合う。
「お兄ちゃんたちも、ご本読むので忙しいのにいっぱい遊んでくれるよね!ニーナ、何かお礼したいなぁ」
シャオリーはニーナのいたいけな気持ちにジンとした。
遊びたい盛りの小さな子どもが、自分を構ってくれないことに文句を言うどころか、遊んでくれた相手の事情を察して感謝している。
優しい子だ。
「ニーナの気持ちだけで十分!あいつら、泣いて喜ぶわよ!」
「うーん、でもー…」
「そうだ!じゃあ何か手作りのプレゼントをするのはどう?私も手伝うわ!…っと…」
エドとアルが家の廊下を駆け抜けていくのが窓から見えた。
もう間もなく玄関を開けて外に出てくるだろう。
「…と思ったけど、今日は時間切れみたい。また明日ね?」
しかし、ニーナは首を横に振った。
「ニーナ、一人で作る!それで、お姉ちゃんのも作ってあげるね!」
シャオリーは、胸が熱く弾けるのを感じた。
ニーナに跳びつき、頬を両手で大きく揺さぶる。
「あなたのそういうところ好きよ、ニーナ!」
ニーナは笑い声を上げ、シャオリーに抱きついた。
「ニーナも、お姉ちゃん大好き!」
その後ろから、エドとアルが、アレキサンダーと共に駆け寄ってきていた。
ニーナはシャオリーに抱きついたまま、口元を耳に寄せる。
「お姉ちゃん」
「なあに?」
「お兄ちゃんたちには明日まで内緒だよ?」
「うん、わかった。明日ね」
「うん、明日ね!」
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