黄金の草原 | ナノ

07.マルコーの言葉


(3/10)


それから数日、エドとアルは抜け殻のようになっていて、部屋からも出ようとしなかった。

その心情は想像に余る。

エドの顔は蒼白だった。

アルの鎧も、自身に当たる照明を煩わしそうに跳ね返すばかりで、その様子は鬱屈として見えた。

部屋にはただ、寒々しい沈黙が流れている。





彼らの様子を伺う余裕すらあるものの、シャオリーも少々滅入っていた。

頭が重い。

身体がだるい。

視線を動かすことさえ億劫だった。





一族復興の悲願をこの石に見ていた。

内に莫大なエネルギーを秘め、対価を必要とせず錬成を成し得るという奇跡の石に。

これさえあれば、皇帝の気を引ける。

皇帝に取り入れる。

上手く働きかければ、一族復興だって不可能じゃないはずだった。

そうすれば戻れる。

昔みたいに。

あの頃みたいに。

ホンユイと

――リンと。





伝承のように語り継がれるだけだったその石は、エドとアルに出会うことで一気に現実性を増した。

そしてついに、自分の手元まで落ちてきたのだ。

しゃがめばすぐに触れられるほど近くに。

なのに、実物は重すぎて持ち上げることが叶わない。

目の前にあるのに。

すぐに触れられる位置にあるのに。





もどかしい。

悔しい。

やるせない。

やり場のない怒りが体内を渦巻く。





遠い。

ここまで近づいたのに。

近づいたからこそ、遠い。

成す術がない。

本当に、拷問だ。





こんなもの最初から存在しなければ、いっそ心も穏やかだっただろうに。

シャオリーは今更栓のないことを思う。

夢見させるようなことしないでよね。

ため息をついて眉を寄せる。

そうだ、本来なら、存在するはずのないものだ。

存在してはいけないもののはずだ。

こんなおぞましい製法で作られるものが、なぜ存在する?





シャオリーは忌々しげに吐き捨てる。

どこの国も同じね。





こんないかれた所業を行うのは、権力者と相場が決まっている。

一番初めに賢者の石を生成したのも、そういう人間に違いない。

そう、いつでも道を踏み外すのは権力者だ。

よくわかる。

なぜなら、自分も少し前まで権力者だったのだから。





シンの皇帝も、この事実を知れば迷わず賢者の石を生成しようとするだろう。

だから決して、この事実を国に持ち帰ってはいけない。

そうするべきではない。





(3/10)

- 63/427 -

[bookmark]



back

[ back to top ]

×
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -